明治日本の産業革命遺産
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PEOPLE

2017.06.06
Vol.19

歴史や文化を継承することは、次世代の技術革新を生み出す~"使いながら残す"に道を開いた「明治日本の産業革命遺産」~

後藤 治 氏

工学院大学常務理事

後藤 治 氏
プロフィール

1960年東京生まれ。

1988年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程中退、文化庁入庁。

文化財保護部(現文化財部)建造物課文部技官、同文化財調査官などを経て

1999年工学部建築都市デザイン学科教授。

2011年常務理事に就任。改組により、建築学部建築デザイン学科教授(現職)。

2017年理事長に就任。

専門分野は日本建築史及び歴史的建造物の保存修復。工学博士。一級建築士。

--大変ご無沙汰をしています。後藤先生は「明治日本の産業革命遺産」がまだ形になる以前から、産業遺産国民会議の加藤康子専務理事のいわば個人的な指導教官の役割を果たされたと認識しています。そもそも加藤さんとのお付き合いはどのような形で始まったのでしょうか?

 最初の出会いは90年代前半だったと思います。加藤さんが『産業遺産』(日本経済新聞社、1999年)を出版されるよりさらに前になりますが、加藤さんから文化庁に「日本の産業関連の文化財の保存がどのようになっているか知りたい」という照会があり、その当時、文化財保護部建造物課で調査官を務めていた私が対応させていただいたのがきっかけです。文化庁では平成2(1990)年から近代の文化財の全国調査をやっていました。これは近代の産業、交通、土木関係の建造物に関する都道府県別調査で、その中から重要文化財の指定もやっていこうという事業でした。たまたま責任者の上司が不在か何かで、私が対応することになったんです。

 加藤さんはまだハーバード留学から帰国されたばかりの頃だったと思いますが、米国のローエルなど自ら調査された欧米の事例を引き合いに出しながら、「なぜ日本では産業遺産の保存ができていないのか」と鋭く質問されましたね(笑)。それに対して、日本では今こういうことになっていると現状をご説明致しました。

--それ以来、二十数年のお付き合いということですが、最初の頃から、はからずも加藤さんの個人的な調査・取材活動のアドバイザーになっていたわけですね(笑)。当時の加藤さんの印象はいかがでしたか?

 とにかく熱心でしたね。よく覚えているのは、興味の範囲が広くて、疑問に思われる事柄がたくさんおありだったことですね。「海外ではごく普通にできているのに、なんで日本ではできないのか」とストレートに突っ込んでこられる(笑)。そこで、私がその場ですべてに答えるのではなく、公益財団法人の日本ナショナル・トラストの米山淳一さん(現横浜歴史資産調査会常務理事)とか、国立科学博物館の清水慶一先生(故人)とか、加藤さんが興味のありそうな関係する専門家をご紹介させていただきました。そのうえで「ご自身でまず取材されて、まだ疑問があれば、もう一度来てください」と申し上げたんです。

 こうした場合、大抵はこれで終わりになるものなのですが、加藤さんは本当に何度も私ところにいらっしゃいました。とにかく真面目に調べられていて、わからないこと、疑問に思うことはとことん追究されるわけです。反応は早いし、行動力もあるから、こちらも真剣に対応せざるを得ない。こんな人は初めてでしたね(笑)。

--そこから『産業遺産』の本が出版されるまで数年間あったわけですが、その間のやり取りで印象的なこと、あるいはあの本ができた時の感想をお聞かせください。

 当時、私は近代の文化財建造物の重文指定や新しい「登録有形文化財(建造物)制度」の立ち上げなどを担当していました。その立場上、いろいろな企業に登録や指定のご協力をお願いに行ったり、当時の大蔵省、自治省と税制改正・法律改正の交渉をしたりしていましたので、加藤さんの質問にお答えする中で、日本の近代化遺産、産業遺産についてお互いにディスカッションを重ね、問題意識を高めていったと言えるかもしれませんね。

 加藤さんのご著書が完成して初めて手にした時に思ったのは、「日本でもこうした本ができる時代になったんだ」というものでした。私の中では「もう少し先になるのかな」と考えていましたから、素直に「これはスゴいな」と思いました。

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