明治日本の産業革命遺産
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PEOPLE

2023.01.30
Vol.51

吉田松陰や幕末の志士たちの熱き想い、急速な産業化を通して日本を支えた優れた功績 ~ 松陰神社には明治維新に至る歴史をきちんと伝えていく使命がある

上田 俊成

松陰神社 名誉宮司

上田 俊成
プロフィール

昭和16年6月20日生。

昭和39年に國學院大學史学科を卒業。

昭和42年~平成19年 飯山八幡宮宮司

平成13年~平成19年 山口県神社庁長

平成16年~平成19年 神社本庁理事

平成14年~平成22年 長門文化協会会長

平成15年~平成28年 松陰神社宮司

平成22年~平成28年 山口県文化連盟会長

平成22年~平成26年 九州大学人材養成センター非常勤講師

平成24年~平成27年 山口福祉文化大学非常勤講師

平成28年より松陰神社名誉宮司・顧問を務める傍ら

令和3年7月に長門市文化材保護審議会会長に就任。

著作には、『長門市史歴史編』、『長門市史民俗編』『零言集』がある他、

雑誌、会誌、新聞等に論文や随筆を多数寄稿。

世界遺産登録までの経緯を振り返って

加藤 本日はお忙しいところ対談の機会をいただき光栄です。

上田 萩で講演会を開催した昨年の9月以来ですね。あの折には貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

加藤 こちらこそお世話になりまして感謝しています。私は松下村塾へ行くたびに心が洗われるような気持ちがするのです。日本の近代の歩みはここから始まったのだと思うと非常に感慨深いものがありまして。吉田松陰先生の志というものが松下村塾での優れた人材の育成につながり、日本人は明治維新を成し遂げた。この事実を後世に伝えたいという想いが「明治日本の産業革命遺産」における原点でした。しかし振り返れば、いろいろな経緯を辿り……。世界登録に向けて走り始めた当初萩市は城下町で世界遺産の暫定リスト入りを目指していたんです。

上田 そうでしたね。「萩城・城下町及び明治維新関連遺跡群」で山口県と萩市と地元住民が一丸となって文化庁への提案に向けて準備を進めておりました。

加藤 そんな中、産業革命での登録という提案を受けて宮司はどう思われましたか?

上田 正直なところ産業革命という視点を明確に把握することができず戸惑いました。しかし日本の近代化という視点をもって改めて松陰先生の論文を読み直してみたところ、なるほど確かにと深く納得した次第です。松下村塾で海防の必要性や、西洋に学ぶ産業技術の獲得を重視する思想を習得した志士たちが後に明治政府を樹立し、日本の近代化に大きく貢献したことは明白だと。

加藤 そうでしたか。世界遺産登録までの経緯に話を戻しますと、萩では「萩城・城下町及び明治維新関連遺跡群」と「九州・山口近代化遺産群」(のちに「明治日本の産業革命遺産」と改称)の両方で手を挙げるという決断を野村市長がなさり、さまざまな調整を行いながら2007年1月23日の文化審議会の発表の日を迎えました。ところが「九州・山口近代化遺産群」は暫定一覧表に入らず、継続審議となってしまいました。

上田 「萩城・城下町及び明治維新関連遺跡群」との区別化や複数県にまたがる大型プロジェクトである点が課題として残されたように記憶していますが。

加藤 私は野村市長に申し訳なくて、大変に厳しい局面でした。それだけに印象深いのが2月3日に萩で開催された世界遺産シンポジウム。あの日は朝から雪が深々と降り積もっていて、私は灰色の空を仰ぎながら、人が集まってくれるのだろうかと不安でした。ところが会場へ行ってみたらビックリするほど大勢の方が足を運んでくださっていて。これだけ多くの方が関心を寄せてくださるのなら新たに踏み出せると、再起の始まりを予感したのです。

上田 私も会場にいた一人ですが、あの日が転換点だったのですね。

加藤 2月3日のシンポジウムが不発に終わっていたら、文化庁から定義された課題をクリアするという方向へ進めず、「明治日本の産業革命遺産」という形で生まれ変わって歩みを続けることはできなかったと思います。私は転換期を経て、転んでも立ち上がることができるかどうかが重要なのだということを学びました。

上田 人生もまたしかりですね。とはいえ誰にでもできることではないでしょう。よくぞ成し遂げてくださったと心から感謝いたします。

松下村塾.jpg

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