明治日本の産業革命遺産
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PEOPLE

2023.11.08
Vol.54

『侍が、カンパニーへ』という歴史的流れは日本の誇り~明治日本の産業遺産の中心的存在である長崎がリードして次世代へつなぐ

鈴木史郎

長崎市長

鈴木史郎
プロフィール

生年月日: 昭和42年7月生まれ

出身: 長崎県長崎市(出島町)

・東京大学法学部 卒業

・ロンドン大学政治経済学院(LSE)大学院 修了

・ジョージ・ワシントン大学法科大学院 修了

・タフツ大学フレッチャー法律外交大学院 修了

平成 3年 4月 運輸省(現・国土交通省)入省

平成20年 7月 内閣府国際平和協力本部事務局調査官

平成22年 9月 観光庁企画室長

平成26年 1月 関東運輸局企画観光部長

平成27年 4月 海上保安庁警備救難部国際刑事課長

平成29年 9月 内閣府地方創生推進事務局総括参事官

令和 元年 7月 海上保安庁総務部参事官(警備救難)

令和 2年 7月 第五管区海上保安本部長

令和 4年 6月 九州運輸局長

令和 4年12月 国土交通省を退職

令和 5年 4月 長崎市長に就任

明治日本の産業革命遺産との縁を感じて

加藤 まずは、長崎市長へのご就任、おめでとうございます。鈴木市長は2017年から2年に亘る内閣府内閣官房時代に、明治日本の産業革命遺産に関わっておられたようですが、かねてよりたくさんのご尽力を賜りまして感謝しています。

鈴木 ご縁が続くことを嬉しく思います。長崎は私自身の故郷だということもあり、世界遺産登録に向けての取り組みにすごく「やり甲斐」を感じていました。先日、東京の産業遺産情報センターにも伺いましたが素晴らしいですね。

入り口を入ってすぐの場所に長崎の展示コーナーが設けられているということもあり、一歩足を踏み入れた途端にワクワクしまして。長崎にいるより長崎のことがよく理解できると感動しました。

加藤 ありがとうございます。

鈴木 長崎にいても、産業遺産という切り口であそこまで資料を整理して、ストーリーをつなげてプレゼンテーションするという施設はありません。日本における産業革命を俯瞰して眺めながら、長崎の位置づけを知ることの大切さを痛感しました。

加藤 ご存知のように明治日本の産業革命遺産は、全体で23の構成資産によるシリアルノミネーションですが、長崎には小菅修船場跡、三菱長崎造船所の第三船渠、ジャイアント・カンチレバークレーン、旧木型場、占勝閣、高島炭坑、端島炭坑、旧グラバー住宅と8資産もあり、もっとも産業遺産の多い県なのです。

鈴木 はい。一つひとつの資産がどのような役割を担ってきたかという点において、しっかりと受け止め、広く伝えていきたいと考えています。

加藤 情報センターにおける構成資産の展示の仕方については検討を重ねました。さまざまな関わり方があるのですが、最終的に三菱合資会社時代の三菱にゆかりのある遺産群をまとめることにしたのです。「侍がカンパニーに」という歴史的な流れを感じていただきたいと思っています。

鈴木 日本が西洋の技術を最初に取り入れ、さらに独自のものとして進化発展させていったということ自体が誇らしいのですが、長崎市民としましては、そのプロセスが長崎で起こったという事実に興奮を覚えます。

加藤 三菱の事業に関わる方々も数多く情報センターにお見えになるのですが、みなさん大変に喜んでくださっています。

鈴木 そうでしょう。三菱の宝が長崎にたくさん埋まっているわけで、情報センターに行けば立体的な資料を眺めることができるのですから。私も日本人の一人として、三菱という会社や従事して来られた方々に敬意を表します。同時に、世界遺産登録された貴重な遺産群をいかに守っていくかといった重責を担っていると感じています。

対談風景2.jpg

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