明治日本の産業革命遺産
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PEOPLE

2018.09.20
Vol.28

各地域に着実に広がる「つながりあるストーリー」という意識~保全管理・インタープリテーションのあり方には課題も~

サラ・ジェーン・ブラジル(Sarah Jane Brazil)氏

世界遺産コンサルタント

サラ・ジェーン・ブラジル(Sarah Jane Brazil)氏
プロフィール

世界遺産コンサルタントであるサラ・ジェーン・ブラジル氏。明治日本の産業革命遺産の保全管理、そしてインタープリテーションのアドバイザーである。初来日の際、「23もの複雑な構成資産を世界遺産リストに登録するためのプロセスで、どれほどの労力が絶えず必要なのだろう」と強く感じたという。今回は、世界遺産登録後のインタープリテーション戦略(Interpretation Strategy)策定のために再来日。これまでの経緯、そして今後の課題を伺った。

--サラ・ジェーンさんは、オーストラリアの歴史遺産保存の専門家でいらっしゃいます。『明治日本の産業革命遺産』との関わりは、最初はICOMOS(イコモス=国際記念物遺跡会議)の調査員として、世界遺産への登録に相応しいかどうかを客観的に査定される立場で来日されました。今回は、海外有識者のおひとりとして、本遺産の保全管理・インタープリテーションのあり方に関して、さまざまなアドバイスをされました。

 その通りです。私が初めて来日したのは2014年です。私の役割は、『明治日本の産業革命遺産』がユネスコ世界遺産に登録するに値する歴史的価値があるかどうか、あるいは保全や管理体制が十分に整っているかなどの点を、中立・客観的な立場で査定することでした。この時、私は23の構成資産をすべて回りました。イコモスが世界遺産に求める必須条件は、真正性(authenticity)、完全性(integrity)です。加えて、各資産の保全と管理体制を現地で調査します。それをもとに報告書を作成し、イコモスに提出しました。

--日本では、こうした複数の歴史遺産で構成されるシリアル・ノミネーション方式による登録申請は初めてでした。それで、日本の関係者側には、相当ピリピリとした緊張感が漂っていたそうです。

 はい、そのようですね(笑)。もっとも、それはわれわれ調査する側も同じでした。私も大変緊張していました。というのも、ここまで大規模で複雑な歴史遺産の査定を担当するのは、初めての経験だったからです。

--それ以前、イコモスではどのような世界遺産を担当されていたのでしょうか?

 主に、登録された世界遺産の管理です。具体的には、世界遺産に登録された後にどのような課題が生じるかを考えます。英国スコットランドのニュー・ラナークの世界遺産等が一例です。これは、18世紀末に起こった英国の産業革命期の綿紡績関連の工場や労働者住宅等で構成されています。まさに「明治日本の産業革命遺産」と同様、民間の所有施設を含む官民のパートナーシップで登録された複雑な歴史遺産です。所有権をめぐって、地元の関係者とのかなりタフな交渉もしました。特に、この世界遺産の保全管理やインタープリテーションが、地域コミュニティーにどのような社会的、経済的利益をもたらすかについて、うまく交渉する必要がありました。

--それ以外に、どのようなキャリアを積んで来られたのでしょうか?

 世界遺産や歴史遺産に長く関わって来ました。母国では、オーストラリアイコモスの執行委員会のメンバーです。また、キャンベラの旧国会議事堂をはじめ、政府が選定する国内遺産のリスト作りにも関わりました。それとは別に、国内遺産の中からベスト・プラクティスを選ぶ組織も立ち上げました。こうした中で、若い世代に対する、保全や修復に関する教育活動にも幅広く関わってきました。

 この他、ユネスコ世界遺産関連では、英国の『世界遺産フォーラム』のメンバーとして、英国内にある28の世界遺産のプロモーション活動にも参画しています。

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