明治日本の産業革命遺産
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PEOPLE

2019.06.17
Vol.32

「シンクロニシティー」が生んだ世界遺産登録という奇跡~想いの強さが志ある人々の共感を呼び起こした!~

大上 二三雄 氏

エム・アイ・コンサルティンググループ株式会社 代表取締役

大上 二三雄 氏
プロフィール

1958年 北九州市生まれ。

1981年 東京大学工学部を卒業後、アンダーセンコンサルティング(現:アクセンチュア)入社。企業の戦略、オペレーション、IT、アウトソーシングを中心にしたさまざまな企業改革に従事。事業開発グループ統括パートナーとして事業開発・ベンチャー投資の責任者を務めた後、2003年に退社。

現在、株式会社トプコン常務執行役員アイケア事業本部長、エム・アイ・コンサルティンググループ株式会社代表取締役。
他に北九州市参与、立命館大学MBA客員教授、ISL幹事などを務める。著書に『戦略アウトソーシング』、『人材マネジメント革命』など(いずれも東洋経済新報社)

■吉岡氏、和泉氏らと共に「内閣府所管案件」への道を拓く

--「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録を実現するにあたっては「大上さんが長年のコンサルティング活動を通じて築かれた人脈・人材ネットワークが、私たちの活動の大きな後ろ盾になった」と加藤康子・産業遺産国民会議専務理事は語っています。

大上 いえいえ、私は単に世界遺産の登録実現を応援してくれるキーパーソンになるであろう何人かの有力者をご紹介しただけですよ。

--初めて加藤専務理事とお会いになられたのはいつ頃だったのでしょうか?

大上 2010年の春頃だったと思います。当時、私は政府の規制改革委員会の委員だったのですが、その事務方だった吉岡正嗣(まさつぐ)さん(現経済産業省資源エネルギー庁石炭課長)が連れてこられたんです。その頃、私は東京大学の「エグゼクティブ・マネジメント・プログラム」の講師をしていたのですが、吉岡さんは受講生の1人で親しくさせていただいておりました。それで「この人にぜひ会ってください」と紹介されたんです。

 加藤さんは「規制改革したいテーマがあるんです」と言いながら、意を決して乗り込んで来たような感じでした(笑)。要するに、世界遺産実現に向けて、政府の枠組みを変えたいと考えておられた。従来は文部科学省の所管だったのを、「これでは百年経っても実現しない。国土交通省や経済産業省などにもまたがる案件なんだがら、内閣府の所管にしてほしい」というわけです。この要請を受けて、規制改革委員会でテーマアップしたところ、当時内閣官房地域活性化統合事務局長だった国交省出身の和泉洋人(いずみ・ひろと)さんが受け手になってくれて、担当の参事官を付けてくれた。そこから一気に事が動き出した。ざっと、そんな経緯です。

--これはどなたにもお聞きしている質問なんですが、加藤さんの第一印象はいかがだったでしょう?

大上 いやぁ、面白い人がいるんだなぁって思いました(笑)。この頃はまだ加藤さんも起業家としてご自身のビジネスもやっておられて、そちらのほうについても「バリ島でクリーニング事業をやってくれそうな人を紹介してくれないか」だの、「バリ島でヘアサロンをやる人はいないか」だのとリクエストがあって、大手クリーニング企業の役員さんをご紹介したり、ご協力させていただきましたよ(笑)。

--コンサルタントの眼からご覧になって、彼女の起業家としての資質はどうのように評価されましたか(笑)?

大上 一般的な起業家よりも、こうした社会活動の推進役の方が向いていると思いましたね(笑)。まぁ、商売というものはときに変化球も必要になるけれども、加藤さんの場合はいつも直球勝負。その意味では、生涯をかけることのできる大きなテーマを見つけられたわけですから、大変良かったのではないかと思いますよ。

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Vol.56
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Vol.47
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Vol.45
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Vol.44
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Vol.43
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Vol.42
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小野寺 英輝 氏
Vol.41
観光ガイド歴18年、あふれ出る"三角西港愛"~世界遺産登録はゴールではなく、新たな出発点~

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齊藤 万芳 氏(さいとうまんぽう)
Vol.40
韮山反射炉とともに「刻」をきざむ~物産館&レストラン事業で"反射炉観光"の魅力度アップ~

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保田 博 氏
Vol.22
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「ICOMOS-TICCIH共同原則」の真価問われる"世界の実験場"~日本政府が推進する新たな保全へのチャレンジ~

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ディヌ・ブンバル(Dinu Bumbaru )氏
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ジャイアント・カンチレバークレーンと小菅修船場跡の3Dデジタル・ドキュメンテーション

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日本で注目される「産業遺産」

ヒストリック・スコットランド産業遺産政策責任者

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富士山と韮山反射炉、2つの世界遺産を一望できる茶畑の丘 --次の夢は「子どものためのミニ反射炉」で体験学習

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小野 登志子 氏
Vol.13
登録までの道のりと資産の今後を見つめて

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正確な情報発信の中で、歴史を見つめるきっかけに

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Vol.11
「ものづくりの街・北九州」への愛着と誇り--"シビック・プライド"を呼び起こしてくれた世界文化遺産登録

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北橋 健治 氏
Vol.10
世界遺産登録決定祝賀会レポート(@ドイツ・ボン)

2015年6月28日から7月8日まで、ドイツ・ボンにて第 39 回世界遺産委員会が開催され、「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録が決定しました。

今回は、世界遺産登録決定祝賀会の様子をお伝えいたします。

<世界遺産登録の舞台裏>
Vol.9
使いながら保存する-「稼働遺産」の保存・活用に新たな道を拓く

阪神高速道路株式会社 取締役兼常務執行役員

(一般財団法人産業遺産国民会議 理事)

岡本 博 氏
Vol.8
港湾法の体系で、世界遺産の保全を担保する

静岡県副知事

難波 喬司 氏
Vol.7
近代化を切り拓いた長州ファイブと試行錯誤の痕跡を残す萩の資産

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野村 興兒 氏
Vol.6
日本の「ものづくり」「産業」の原点を伝える「明治日本の産業革命遺産」

東京地下鉄株式会社 代表取締役会長

安富 正文 氏
Vol.5
日本の近代工業化を石炭産業によって支えた三池エリア

大牟田市長

古賀 道雄 氏
Vol.4
国家、社会のため、広い視野と使命感を持って試行錯誤しつつ挑戦し続けた「明治の産業革命」の意義

文部科学省 生涯学習政策局 生涯学習総括官
前 内閣官房 内閣参事官

岩本 健吾 氏
Vol.3
「鉄は釜石から八幡へ」 近代製鉄発祥の地から誇り高き文化を伝える

釜石市長

野田 武則 氏
Vol.2
強く豊かな国家を目指して 薩摩藩主島津斉彬が築いた『集成館』

一般財団法人産業遺産国民会議 理事

島津興業 相談役

島津 公保 氏
Vol.1
産業国家日本の原点 『明治日本の産業革命遺産』を次世代へ

「九州・山口の近代化産業遺産群」世界遺産登録推進協議会 会長/鹿児島県知事

伊藤 祐一郎 氏