明治日本の産業革命遺産
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PEOPLE

2017.04.18
Vol.18

シリアル登録方式の保全管理に新たな道を拓いた「明治日本の産業革命遺産」-- 今後の大きな課題は「記憶と理解を引き継ぐ人材研修」

ダンカン・マーシャル(Duncan  Marshall)氏

ヘリテージ保全並びに世界遺産の専門家としてグローバルに活躍する国際コンサルタント

ダンカン・マーシャル(Duncan Marshall)氏
プロフィール

ヘリテージ保全並びに世界遺産の専門家としてグローバルに活躍する国際コンサルタント。ユネスコのために世界遺産のCMP(管理保全計画)のマニュアルを作成した。長年ICOMOSの委員として、遺産の保全に尽力し、国連訓練調査研究所(UNITAR)が運営し毎年広島で開催される世界遺産国際教育・訓練プログラムにおいて世界遺産関連の担い手の育成のための教育・トレーニングに携わる。世界遺産の登録推進にあたり、主にオーストラリア、インド、日本、ラオス、ミャンマーなどで政府に助言並びにコンサルティングをしてきた。オーストラリアでは、以前日本の文化審議会に相当するACT遺産委員会会長を務めていた。2015年にはその功績を称えられ、バサースト・マッコーリー遺産勲章を授与されている。

オーストラリアの歴史遺産保全のスペシャリストで、「明治日本の産業革命遺産」のユネスコ世界遺産登録においても海外有識者の1人として尽力されたダンカン・マーシャル氏が2017年3月、来日された。今回の来日は、同じく海外有識者であるマイケル・ピアソン氏とともに、内閣官房の戦略的枠組み(Strategic Framewok for Conservation and Management)に基づく本遺産の将来にわたる保全・管理についてアドバイスすることが主な目的。そこで、この機会を捉え、マーシャル氏に改めて「明治日本の産業革命遺産」の価値と今後の保全管理における課題などについてお話をうかがった。なお、インタビューは3月28日に東京で通訳者を介して行い、一般財団法人産業遺産国民会議の加藤康子専務理事も同席した。

--はじめに、マーシャルさんはどのような経緯で「明治日本の産業革命」に関わるようになったのでしょうか?

マーシャル:私の仕事仲間で古い友人であるマイケル・ピアソン氏からこのプロジェクトに対する協力を頼まれたのが最初のきっかけです。私に求められた役割は、主に管理保全計画(CMP)を作るに当たって専門家の立場でアドバイスを行うことでした。実際に、ユネスコに推薦書を提出する数年前のことになります。

 もう1つ、付け加えると、私はそれ以前から広島にある国連訓練調査研究所(UNITAR)広島事務所で、世界遺産の保全と管理に関するトレーニングを行っており、日本には何回も来ていました。だから、日本になじんでいることも大きな理由だったと思います(笑)。

--ピアソンさんから具体的に誘われたのはいつ頃だったのですか?

マーシャル:ピアソン氏がこのプロジェクトに関わってから既に9年ほど経っていると思いますが、私たちは長年の友人同士であり、家が近いということもあって、その当時からたびたび話を聞いていました。ですから、直接関わるようになる前から、私はこのプロジェクトのことをよく知っていました。

--話を聞いた時の第一印象はどのようなものでしたか?

マーシャル:非常に興味を持ちました。というのも、日本ではそれ以前は「世界遺産」というと、古い寺院や文化遺産を登録申請することが多く、「明治日本の産業革命遺産」はそれらとは全く異なるヘリテージだったからです。日本が近代的な工業国であることは誰でも知っていますが、近代産業国家でなかった日本が近代化、産業化に向けて歩み始めた「移行期」に焦点を当てたこのストーリーは、世界ではあまり知られていません。ですから、特にその点がとても面白いと感じました。

--こうしたタイプの近代化遺産・産業遺産は、世界的にも珍しいものなのでしょうか?

マーシャル:私自身は産業遺産の専門家ではありませんが、日本や海外のエキスパートたちからは、世界にはたくさんの産業遺産が残されているけれども、「明治日本の産業革命遺産」はしっかりとしたエビデンス(証拠)が残っている遺産という意味で大変重要であると評価しています。例えば、本遺産群には明治期に実際に使われていた技術がそのまま残っているものがいくつかあります。それらは世界的に見ても貴重であると言えます。

 もう1点、他とは異なる本遺産の特筆すべき特色は、構成資産の数の多さと分布している地域の広さです。23もの構成資産によって近代日本の産業化というとても大きなストーリーを語ろうという試みは大変ユニークです。

--シリアルノミネーション方式による産業遺産の世界遺産登録というのは、それだけ世界史的に見ても価値が高いということですね。

マーシャル:その通りです。

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