忘れ難いS・スミス氏との激論の日々 ~異文化の中で出会った"なじみ深い19世紀の産業遺産"~
プロフィール
世界遺産のコンサルタントで、特に産業遺産に造詣が深い。25年間世界遺産のアドバイザーを務め、過去15年間はヨーロッパと日本における5つの世界遺産登録推進に寄与してきた。その他、メキシコ、カリブ海、南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドにおいても活躍し、さらに3つの世界遺産登録推進にあたり助言を提供している。ICOMOS(国際記念物遺跡会議、International Council on Monuments and Sites)とTICCIH(国際産業遺産保存委員会、the International Committee for the Conservation of the Industrial Heritage)両方のメンバー。
--バリー・ギャンブルさんは世界遺産コンサルタントとして「明治日本の産業革命遺産」のユネスコ世界遺産登録にご尽力されました。まず、これまでのご経歴を教えてください。
ギャンブル: 私のバックグラウンドは地質学・地理学でして、この分野の産業に従事した後、英国プリモス(Plymouth)大学の講師を経て、1995年から世界遺産のインタープリテーションの仕事を始めました。2003年からは英国の「コーンウォールと西デヴォンの鉱山景観」のユネスコ世界遺産リストへの登録を目指す活動に参画し、06年に実現することができました。
その後はオーストラリア、メキシコ、南アフリカ、ニュージーランドなど世界中で世界遺産の仕事を手掛け、06年からは「明治日本の産業革命遺産」に関わるようになりました。おおよそこの25年間、私は地質学・地理学の専門知識を生かして、主に世界遺産の登録を実現するためのアドバイザーの仕事を続けています。
--世界遺産コンサルタントとしての専門分野はどのようなものなのでしょうか?また、これまでユネスコやイコモス(国際記念物遺跡会議)の中でお仕事をされたことはないのですか?
ギャンブル: 専門領域としては、まさに産業遺産に特化しています。他方、世界遺産への登録について言うと、どのようにして登録を実現するかというプロセスにフォーカスしたコンサルティング活動をしています。私はイコモスのメンバーではありますが、ユネスコやイコモスの内部機関で働いているわけではありません。あくまでも独立したフリーランスのコンサルタントとして、世界遺産サイトを保有する様々な国の政府や地方自治体、管理団体などに直接コンサルティングしています。
--「明治日本の産業革命遺産」のプロジェクト推進者である加藤康子専務理事とは、2006年に本遺産と関わるようになる以前から交流があったのですか?
ギャンブル: いえ、そうではありません。私は本遺産の世界遺産登録に尽力した故スチュワート・スミス氏を通じてこのプロジェクトに参加することになりました。康子さんとはその際に初めてお会いしました。私とスチュワートは90年代前半から共に「コーンウォールと西デヴォンの鉱山景観」の調査研究に取り組み、確か99年だったと思いますが、これを世界遺産に登録しようというプロジェクトを一緒に立ち上げたのです。そして、05年に私はスミス氏の協力も得てコーンウォール景観遺産の推薦書を書き上げてユネスコに提出し、最終的に06年6月に無事に世界遺産に登録することができました。
--そうすると、ギャンブルさんは「コーンウォールと西デヴォンの鉱山景観」という大きな仕事を成功させて、休む間もなく、「明治日本の産業革命遺産」の仕事に取り組むことになったわけですね。
ギャンブル: そのとおりです。私が初めて日本に来たのは2006年11月で、わずか5カ月後のことです(笑)。それには理由がありました。というのは、この「コーンウォールと西デヴォンの鉱山景観」はシリアルノミネーション方式で世界遺産リストに登録された産業遺産だったのです。この経験から、スチュワートと私はいろいろな角度から議論する中で、日本の産業革命遺産はコーンウォールと同じように構成資産が広い地域に分散した大規模なものであり、コーンウォールと同様のシリアルノミネーション方式が極めて適しているという結論に至りました。
前述したように、スチュワートと私は古くからの同僚であり、大変親しい友人でしたから、私たち二人のコーンウォールでの経験がそのまま日本にも役立てることができるのではないかと考えたわけです。このことが、私が今こうしてこの場にいる理由です(笑)。
Vol.57
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Vol.56
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フジサンケイグループ 代表
株式会社フジ・メディア・ホールディングス取締役相談役
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Vol.55
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Vol.54
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Vol.53
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Vol.52
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Vol.29
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Vol.24
着々と進む"世界遺産周遊ルート"の整備・振興 ~推進協議会、多彩なプロモーションで世界に向けて魅力発信!~
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一般財団法人産業遺産国民会議 代表理事
(公益財団法人資本市場振興財団 顧問)
Vol.22
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「ICOMOS-TICCIH共同原則」の真価問われる"世界の実験場"~日本政府が推進する新たな保全へのチャレンジ~
Vol.20
忘れ難いS・スミス氏との激論の日々 ~異文化の中で出会った"なじみ深い19世紀の産業遺産"~
Vol.19
歴史や文化を継承することは、次世代の技術革新を生み出す~"使いながら残す"に道を開いた「明治日本の産業革命遺産」~
Vol.18
シリアル登録方式の保全管理に新たな道を拓いた「明治日本の産業革命遺産」-- 今後の大きな課題は「記憶と理解を引き継ぐ人材研修」
ヘリテージ保全並びに世界遺産の専門家としてグローバルに活躍する国際コンサルタント
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Vol.17
ジャイアント・カンチレバークレーンと小菅修船場跡の3Dデジタル・ドキュメンテーション
The Glasgow School of Art’s School of Simulation and Visualization、データ・アクイジション責任者
Vol.15
「スコティッシュ・テン プロジェクト」によるデジタル文書化
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Vol.14
富士山と韮山反射炉、2つの世界遺産を一望できる茶畑の丘 --次の夢は「子どものためのミニ反射炉」で体験学習
Vol.13
登録までの道のりと資産の今後を見つめて
ロイヤル・カレッジ・オブ・アート副学長・評議会議長
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Vol.12
正確な情報発信の中で、歴史を見つめるきっかけに
Vol.11
「ものづくりの街・北九州」への愛着と誇り--"シビック・プライド"を呼び起こしてくれた世界文化遺産登録
Vol.10
世界遺産登録決定祝賀会レポート(@ドイツ・ボン)
2015年6月28日から7月8日まで、ドイツ・ボンにて第 39 回世界遺産委員会が開催され、「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録が決定しました。
今回は、世界遺産登録決定祝賀会の様子をお伝えいたします。
Vol.9
使いながら保存する-「稼働遺産」の保存・活用に新たな道を拓く
阪神高速道路株式会社 取締役兼常務執行役員
(一般財団法人産業遺産国民会議 理事)
Vol.8
港湾法の体系で、世界遺産の保全を担保する
Vol.7
近代化を切り拓いた長州ファイブと試行錯誤の痕跡を残す萩の資産
Vol.6
日本の「ものづくり」「産業」の原点を伝える「明治日本の産業革命遺産」
Vol.5
日本の近代工業化を石炭産業によって支えた三池エリア
Vol.4
国家、社会のため、広い視野と使命感を持って試行錯誤しつつ挑戦し続けた「明治の産業革命」の意義
文部科学省 生涯学習政策局 生涯学習総括官
前 内閣官房 内閣参事官
Vol.3
「鉄は釜石から八幡へ」 近代製鉄発祥の地から誇り高き文化を伝える
Vol.2
強く豊かな国家を目指して 薩摩藩主島津斉彬が築いた『集成館』
一般財団法人産業遺産国民会議 理事
島津興業 相談役
Vol.1
産業国家日本の原点 『明治日本の産業革命遺産』を次世代へ
「九州・山口の近代化産業遺産群」世界遺産登録推進協議会 会長/鹿児島県知事