~産業遺産情報センターの主任研究員として、文化遺産の魅力を発信~
産業遺産情報センター主任研究員
日本鉱業株式会社 名誉顧問
釜石応援ふるさと大使
プロフィール
1934年、栃木県足尾町に生まれる。1957年、東京都立大学工学部工業化学科卒業後、日鉄鉱業(株)に入社。同社取締役、釜石鉱山(株)代表取締役などを歴任。現在、日鉄鉱業(株)名誉顧問。「NPO法人足尾に緑を育てる会」や「NPO法人足尾歴史館」の設立に参画。産業考古学・鉱山史の研究にも取り組んでいる。明治期の足尾銅山の御抱え写真師小野崎一徳を祖父に持ち、学生時代から供出された一徳の写真を回収してきた小野崎研究員。 仕事は、「銅」ではなく「鉄」に生き、岩手県の日鉄鉱業釜石鉱山に勤務し、日鉄鉱業の名誉顧問として鉄群を世界遺産にするために貢献。現在は、産業遺産情報センターの主任研究員として文化遺産の発信をしている。日本の近代化を牽引した企業の一つでもある古河足尾銅山については大量の写真が収蔵されており、順次デジタル文書化を進めている。令和4年は足尾において日本で初めて国産化された産業機械である「さく岩機」と「空中索道」、令和5年に「水力発電」、「電気鉄道」、そして令和6年には「鉱害防止工事」を中心に、データベースの作成と公開を行い、その経緯と意義に関する報告を産業遺産情報センターにて行ってきた。
――― 現在、産業遺産情報センターの主任研究員として貢献して頂いていますが、そもそもどのような経緯で情報センターに携わるようになったのですか?
加藤康子情報センター長との出会いについてもお話頂けますか?
小野崎: 加藤さんとは、1999年(平成11年)に日経新聞社で「産業遺産」の著作を出版される頃に初めてお会いしました。それ以来、長きにわたって産業遺産関連の交流が続いています。
2013年(平成25年)には産業遺産国民会議(第一回東京会議)、2014年(平成26年)には産業遺産国際会議(於、ホテルオークラ)に参加して、加藤さんの下、産官学一体となり明治日本の産業革命遺産のユネスコ遺産登録の準備が始まりました。私は有識者会議の産業界プロジェクトチーム・製鋼業ワーキンググループの委員として加藤内閣官房参与(当時)に協力することになったわけです。
そして、2015年(平成27年)にユネスコ文化遺産登録認可後に産業遺産情報センターが設立されることとなり、それ以来、主任研究員としてガイド募集、研修、資料収集、各種調査等を担当しております。
――― 大学ご卒業後は、日鉄鉱業(株)に入社され、同社取締役、釜石鉱山(株)代表取締役などを歴任されており、現在は日鉄鉱業(株)の名誉顧問をされておりますが、ご専門分野の鉄鋼に関心を持たれたきっかけは何でしょうか? また、近代遺産には、もともとご興味をお持ちだったのでしょうか?
小野崎:私は東洋一と言われた銅山町の古河御用写真館で生まれ育ち、鉱業にドップリ浸かった人間です。大学の主任教授から日本製鉄の鉱山資源を扱う日鉄鉱業の研究要員として入社を勧められ、運命と志を持って就職しました。1957年(昭和32年)入社で、戦後の工業復興、技術導入、高度成長期、バブル崩壊、エネルギー革命などを経験しつつ、2000年(平成12年)まで一社懸命に勤めました。その間、第一次産業は沈下し、鉱山、炭鉱の閉山が相次ぎました。スクラップ&ビルドの時代です。
このような産業遺産が、次々とスクラップされた時代に、加藤さんとお会いしました。それから、この時代に活躍され先人たちの足跡を残し、伝え、地域振興に寄与しようという活動が始まりました。その渦中にあって行動を起こすことになり、まずは自分がやれる仕事として釜石の遺産保存の先頭に立つこととなりました。実は、足尾もその前に進めておりました。
――― 釜石は、特に明治日本の産業革命遺産の中でも重要な構成資産「橋野鉄鉱山」を擁する地域ですが、世界遺産登録に向けて準備を進めている際にも小野崎先生は関わっていらしたのでしょうか?
小野崎: 私にできる範囲で関わっています。1957年(昭和32年)に私が会社に入社した年に100年祭があり、実習の時に初めて橋野高炉に出会いました。2007年(平成19年)の150年祭にも参加する奇縁がありました。あの時代の高炉跡が残っているのは世界でも稀です。釜石社長時代にも来客を連れてしばしば出向きました。世界遺産として自社の施設が残っていることを誇りに思います。

Vol.59
~産業遺産情報センターの主任研究員として、文化遺産の魅力を発信~
産業遺産情報センター主任研究員
日本鉱業株式会社 名誉顧問
釜石応援ふるさと大使
Vol.58
世界遺産を守っていくために必要なのは本質的なことを見落とさない視点
一般財団法人長崎ロープウェイ・水族館理事長
前、長崎市世界遺産推進室室長
Vol.57
日本の未来のために今を生きる~明治日本の産業革命遺産の使命は「先人のスピリットを活かしていけば日本は救われる」という気づきと勇気を与えること
Vol.56
明治日本の産業遺産は日本の誇り~先人たちの歩みを知ることは日本の教育を見つめ直すことに通じる
フジサンケイグループ 代表
株式会社フジ・メディア・ホールディングス取締役相談役
株式会社フジテレビジョン 取締役相談役
Vol.55
世界遺産登録までの道のりは、山あり谷ありだった~人の縁という運に恵まれ、救われ、道を拓いて~
日本港湾空港建設協会連合会 顧問(元、一般財団法人 港湾空港総合技術センター理事長)
Vol.54
『侍が、カンパニーへ』という歴史的流れは日本の誇り~明治日本の産業遺産の中心的存在である長崎がリードして次世代へつなぐ
Vol.53
日本で初めて反射炉を作った佐賀藩、洋式海軍の拠点だった「三重津海軍所」~世界遺産登録に注いだ情熱を次世代に繋ぎたい。
前、佐野常民記念館(現、佐野常民と三重津海軍所跡の歴史館)館長
Vol.52
八幡製鉄所は、今も世界最先端のものづくりを作り続ける現役製鉄所
一般財団法人産業遺産国民会議 理事
特定非営利活動法人 里山を考える会 理事
Vol.51
吉田松陰や幕末の志士たちの熱き想い、急速な産業化を通して日本を支えた優れた功績 ~ 松陰神社には明治維新に至る歴史をきちんと伝えていく使命がある
Vol.50
稼働資産「三池港」を世界遺産にする秘策とは。
Vol. 49
明治日本の産業遺産に関する保全マニュアルの重要性とは?
Vol.48
金属学の視点から紐解いて明らかになった産業史の真実~日本人の聡明さ、勤勉さ、不屈の精神を次世代へ伝えることが明治日本の産業革命遺産の使命~
Vol.47
明治日本の産業革命遺産は偉大な教材、覗けば見えてくる様々な世界
元新日本製鐵株式会社社員、世界遺産登録推進室産業プロジェクトチームメンバー
Vol.46
鹿児島から始まった鉄の歴史が日本の近代化を飛躍的に前進させた~薩摩人のバイタリティを、未来に生きる若い世代に引き継いでいきたい~
Vol.45
吉田松陰が工業教育論を説き、命がけで英国へ渡った長州ファイブを輩出~誇らしき萩スピリットを後進へとつなげるために~
Vol.44
三角西港を作った先人の知恵、技術、行動力を子供たちの代へと継承していきたい~コロナ後も続く未来を見据えて今できることに全力で取り組む~
Vol.43
官営八幡製鐵所は「1枚の古写真」から世界遺産になった!~元日鉄マンが明かす、"登録前夜"のとっておきのエピソード~
Vol.42
外に向かって発信する「新しい地元学」を確立したい ~「釜石の誇り」から「日本・世界の中の釜石の誇り」へ!~
Vol.41
観光ガイド歴18年、あふれ出る"三角西港愛"~世界遺産登録はゴールではなく、新たな出発点~
Vol.40
韮山反射炉とともに「刻」をきざむ~物産館&レストラン事業で"反射炉観光"の魅力度アップ~
株式会社蔵屋鳴沢 代表取締役社長
一般社団法人伊豆の国市観光協会会長
Vol.39
運命に導かれて軍艦島デジタルミュージアムを設立~明治日本の産業革命遺産の価値を広く深く伝えるために、自分にできることを始めて、続けて、やり切りたい~
軍艦島コンシェルジュ取締役統括マネージャー
軍艦島デジタルミュージアムプロデユーサー
Vol.38
産業遺産の主役は「人」~世界遺産登録を経て再認識した故郷の素晴らしさ~
Vol.37
すべては長崎の経済発展のために~海運業の枠を超え、長崎の文化や産業遺産の歴史を伝承~
Vol.36
釜石の奇跡と、震災を乗り越えて~世界遺産登録という大きなチャンス~
Vol.35
韮山反射炉とともに後世に伝えたい「850年の歴史資料」 ~待望の新・収蔵庫が完成、保存・修復・活用に弾み
Vol.34
不屈の開拓精神と先人のパワーで時代を切り拓いた歴史~後世へ受け継がれる希望と大きな力~
Vol.33
軍艦島は「地球と人類の未来への警告のメッセージ」~元島民ガイドが訴える想いと願い~
Vol.32
「シンクロニシティー」が生んだ世界遺産登録という奇跡~想いの強さが志ある人々の共感を呼び起こした!~
エム・アイ・コンサルティンググループ株式会社 代表取締役
Vol.31
日本の人達にパワーを~明治日本の産業革命遺産の使命~
渡辺プロダクショングループ代表・株式会社渡辺プロダクション名誉会長
Vol.30
産業遺産の歩みを"100年後を生きる人々"への希望に
Vol.29
"21世紀の薩摩ステューデント"よ、未来を創れ!~旧集成館は鹿児島観光の情報発信拠点~
Vol.28
各地域に着実に広がる「つながりあるストーリー」という意識~保全管理・インタープリテーションのあり方には課題も~
サラ・ジェーン・ブラジル(Sarah Jane Brazil)氏
Vol.27
《為せば成る為さねば成らぬ何事も》~人とつながるための勇気や行動力を~
特定非営利活動法人 九州・アジア経営塾 理事長兼塾長
株式会社SUMIDA 代表取締役
Vol.26
「日本人として、世界に対して誇りを持って発信できる世界遺産」〜内閣官房・有識者会議の流れを決したジャーナリストの視点〜
Vol.25
クラシックカーが「明治日本の産業革命遺産」を走る!~2019年、九州で「ラリーニッポン」を開催~
Vol.24
着々と進む"世界遺産周遊ルート"の整備・振興 ~推進協議会、多彩なプロモーションで世界に向けて魅力発信!~
明治日本の産業革命遺産世界遺産ルート推進協議会会長
一般財団法人産業遺産国民会議理事
(九州旅客鉄道株式会社 相談役)
Vol.23
「遺産観光」の振興に向けたルート整備にいっそうの力を~忘れ難い故郷・呉への空襲と広島原爆の記憶~
一般財団法人産業遺産国民会議 代表理事
(公益財団法人資本市場振興財団 顧問)
Vol.22
世界とつながる町~"長崎のたから"を"世界のたから"へ~
Vol.21
「ICOMOS-TICCIH共同原則」の真価問われる"世界の実験場"~日本政府が推進する新たな保全へのチャレンジ~
Vol.20
忘れ難いS・スミス氏との激論の日々 ~異文化の中で出会った"なじみ深い19世紀の産業遺産"~
Vol.19
歴史や文化を継承することは、次世代の技術革新を生み出す~"使いながら残す"に道を開いた「明治日本の産業革命遺産」~
Vol.18
シリアル登録方式の保全管理に新たな道を拓いた「明治日本の産業革命遺産」-- 今後の大きな課題は「記憶と理解を引き継ぐ人材研修」
ヘリテージ保全並びに世界遺産の専門家としてグローバルに活躍する国際コンサルタント
ダンカン・マーシャル(Duncan Marshall)氏
Vol.17
ジャイアント・カンチレバークレーンと小菅修船場跡の3Dデジタル・ドキュメンテーション
The Glasgow School of Art’s School of Simulation and Visualization、データ・アクイジション責任者
Vol.15
「スコティッシュ・テン プロジェクト」によるデジタル文書化
ヒストリック・スコットランド
スコティッシュ・テン プロジェクト・マネージャー
Vol.14
富士山と韮山反射炉、2つの世界遺産を一望できる茶畑の丘 --次の夢は「子どものためのミニ反射炉」で体験学習
Vol.13
登録までの道のりと資産の今後を見つめて
ロイヤル・カレッジ・オブ・アート副学長・評議会議長
イングランド・ウェールズにおけるカナル&リバートラスト遺産顧問
Vol.12
正確な情報発信の中で、歴史を見つめるきっかけに
Vol.11
「ものづくりの街・北九州」への愛着と誇り--"シビック・プライド"を呼び起こしてくれた世界文化遺産登録
Vol.10
世界遺産登録決定祝賀会レポート(@ドイツ・ボン)
2015年6月28日から7月8日まで、ドイツ・ボンにて第 39 回世界遺産委員会が開催され、「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録が決定しました。
今回は、世界遺産登録決定祝賀会の様子をお伝えいたします。
Vol.9
使いながら保存する-「稼働遺産」の保存・活用に新たな道を拓く
阪神高速道路株式会社 取締役兼常務執行役員
(一般財団法人産業遺産国民会議 理事)
Vol.8
港湾法の体系で、世界遺産の保全を担保する
Vol.7
近代化を切り拓いた長州ファイブと試行錯誤の痕跡を残す萩の資産
Vol.6
日本の「ものづくり」「産業」の原点を伝える「明治日本の産業革命遺産」
Vol.5
日本の近代工業化を石炭産業によって支えた三池エリア
Vol.4
国家、社会のため、広い視野と使命感を持って試行錯誤しつつ挑戦し続けた「明治の産業革命」の意義
文部科学省 生涯学習政策局 生涯学習総括官
前 内閣官房 内閣参事官
Vol.3
「鉄は釜石から八幡へ」 近代製鉄発祥の地から誇り高き文化を伝える
Vol.2
強く豊かな国家を目指して 薩摩藩主島津斉彬が築いた『集成館』
一般財団法人産業遺産国民会議 理事
島津興業 相談役
Vol.1
産業国家日本の原点 『明治日本の産業革命遺産』を次世代へ
「九州・山口の近代化産業遺産群」世界遺産登録推進協議会 会長/鹿児島県知事