産業遺産の歩みを"100年後を生きる人々"への希望に
プロフィール
昭和29年5月2日岩手県北上市生まれ
昭和48年3月岩手県立水沢高等学校、同52年3月東京大学農学部卒業
昭和52年農林省に入省、平成6年岩手県農地建設課長、同7年農地計画課長、同9年関東農政局設計課長、同12年構造改善局技術調査官、同13年農林水産省退職
参議院選挙区(岩手県)選出(平成13年、19年、25年/当選 3 回)農林水産委員長、予算委員長、内閣府副大臣(国家戦略等担当)、東日本大震災復興対策担当大臣・内閣府特命担当大臣(防災)、復興大臣・東日本大震災総括担当大臣を歴任
現在、参議院農林水産委員、同東日本大震災復興特別委員会理事、自由民主党総務、同農林・食料戦略調査会副会長、同農林部会役員、同中小企業・小規模事業者政策調査会会長代行、同東日本大震災復興加速化本部顧問、同農林水産災害対策委員会委員長
――「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録に向けて取り組みを始められた時期や経緯などについて教えていただけますでしょうか。
2010年の9月、民主党政権の下、私が内閣府副大臣に就任して3日目のことでした。釜石市の野田武則市長と加藤康子さんが副大臣室に来られて、「九州・山口の近代文化産業遺産群」(後に「明治日本の産業革命遺産」と改名)に関するお話を伺いました。加藤さんとお目にかかったのはその時が初めてでしたが、情熱的なプレゼンテーションが印象的です。実際、加藤さんの情熱とパワーがなければプロジェクトを推進していくことはできなかったでしょう。さまざまな苦難を乗り越えて、よく成し遂げられたなと頭の下がる思いです。
ハーバード大学院で産業遺産を学ばれたという加藤さんの知識の深さにも感嘆しましたが、何よりも「日本のためになることをしたい」というお考えに心を惹かれました。加藤さんは「今の日本があるのは明治時代の産業革命があればこそなのではないでしょうか?」と切り出され、「製鉄、製鋼、造船・石炭といった産業の現場で、汗を流して働いた人々のことは教科書には出ていませんが、そうした方々の功績を再認識することが、日本人に勇気や希望を与えることになると考えています」といったことをおっしゃいました。それを受けて私は「どうしてこれまで日本には産業遺産の世界登録が行われてこなかったのだろう?」という素朴な疑問を抱きました。なにか盲点を突かれた気がして、咄嗟に「これは素晴らしいプロジェクトですね」とお伝えしたのを覚えています。野田市長が加藤さんと私を引き合わせようとお考えになったのは、私が規制制度改革の担当者だからだろうと認識していたので、自分にできることがあるのならと前向きに受け止めたのです。
――本題はどういった内容だったのでしょうか?
当時、「九州・山口の近代文化産業遺産群」世界遺産登録推進協議会は大きな壁にぶち当たっていました。これには民主党政権だった2010年9月に「新成長戦略にむけた三段構えの経済対策」が閣議決定されたという背景があります。そこから「財源を使わない景気対策」における「日本を元気にする規制改革100」を掲げようという発想が生まれ、これに経済産業省の担当者が「産業遺産の世界遺産登録に関わる運用の見直し」をポンと挙げました。ところが文化庁の理解を得ることができず、政府が決定する閣議決定のリストには入らなかったのです。
もっとも大きな問題は、産業遺産の構成資産の中に「三菱長崎造船所」「官営八幡製鐵所」「三池港」などの稼働資産が含まれていることでした。文化遺産や自然遺産であれば保護するという方向性で検討すればよいわけですが、稼働資産に文化財保護法を適用すると企業の経済活動に影響を及ぼしていまいます。前例のないことでもあり、文化庁は現役の設備施設には文化財保護法を適用することができないという理由から産業遺産の世界遺産登録は論外であると決定づけたのです。しかし加藤さんは、ここで諦めるわけにはいかないということで打開策を模索していると。ご相談内容はこうしたものでした。
その折に加藤さんはいろいろな関係省庁の法律を駆使すればできない話ではないと考えているとおっしゃいました。海外には港湾法や景観法、開発を監督する官庁が計画を管理し、保全と稼働を両立している産業遺産があると。意見を求められた私は、稼働資産を持つ会社に理解を求めることが大切だとしたうえで、稼働資産を世界遺産に登録するための新しい枠組みを構築することは可能だと思いますとお答えしました。文化庁は日本には文化遺産と自然遺産以外はいらないといわんばかりの見解だというけれど、そんなことを誰が決めたのかと。論点は「できるか、できないか」ではなく、「やる気があるか、ないかだ」と、そんな話をした記憶があります。
Vol.57
日本の未来のために今を生きる~明治日本の産業革命遺産の使命は「先人のスピリットを活かしていけば日本は救われる」という気づきと勇気を与えること
Vol.56
明治日本の産業遺産は日本の誇り~先人たちの歩みを知ることは日本の教育を見つめ直すことに通じる
フジサンケイグループ 代表
株式会社フジ・メディア・ホールディングス取締役相談役
株式会社フジテレビジョン 取締役相談役
Vol.55
世界遺産登録までの道のりは、山あり谷ありだった~人の縁という運に恵まれ、救われ、道を拓いて~
日本港湾空港建設協会連合会 顧問(元、一般財団法人 港湾空港総合技術センター理事長)
Vol.54
『侍が、カンパニーへ』という歴史的流れは日本の誇り~明治日本の産業遺産の中心的存在である長崎がリードして次世代へつなぐ
Vol.53
日本で初めて反射炉を作った佐賀藩、洋式海軍の拠点だった「三重津海軍所」~世界遺産登録に注いだ情熱を次世代に繋ぎたい。
前、佐野常民記念館(現、佐野常民と三重津海軍所跡の歴史館)館長
Vol.52
八幡製鉄所は、今も世界最先端のものづくりを作り続ける現役製鉄所
一般財団法人産業遺産国民会議 理事
特定非営利活動法人 里山を考える会 理事
Vol.51
吉田松陰や幕末の志士たちの熱き想い、急速な産業化を通して日本を支えた優れた功績 ~ 松陰神社には明治維新に至る歴史をきちんと伝えていく使命がある
Vol.50
稼働資産「三池港」を世界遺産にする秘策とは。
Vol. 49
明治日本の産業遺産に関する保全マニュアルの重要性とは?
Vol.48
金属学の視点から紐解いて明らかになった産業史の真実~日本人の聡明さ、勤勉さ、不屈の精神を次世代へ伝えることが明治日本の産業革命遺産の使命~
Vol.47
明治日本の産業革命遺産は偉大な教材、覗けば見えてくる様々な世界
元新日本製鐵株式会社社員、世界遺産登録推進室産業プロジェクトチームメンバー
Vol.46
鹿児島から始まった鉄の歴史が日本の近代化を飛躍的に前進させた~薩摩人のバイタリティを、未来に生きる若い世代に引き継いでいきたい~
Vol.45
吉田松陰が工業教育論を説き、命がけで英国へ渡った長州ファイブを輩出~誇らしき萩スピリットを後進へとつなげるために~
Vol.44
三角西港を作った先人の知恵、技術、行動力を子供たちの代へと継承していきたい~コロナ後も続く未来を見据えて今できることに全力で取り組む~
Vol.43
官営八幡製鐵所は「1枚の古写真」から世界遺産になった!~元日鉄マンが明かす、"登録前夜"のとっておきのエピソード~
Vol.42
外に向かって発信する「新しい地元学」を確立したい ~「釜石の誇り」から「日本・世界の中の釜石の誇り」へ!~
Vol.41
観光ガイド歴18年、あふれ出る"三角西港愛"~世界遺産登録はゴールではなく、新たな出発点~
Vol.40
韮山反射炉とともに「刻」をきざむ~物産館&レストラン事業で"反射炉観光"の魅力度アップ~
株式会社蔵屋鳴沢 代表取締役社長
一般社団法人伊豆の国市観光協会会長
Vol.39
運命に導かれて軍艦島デジタルミュージアムを設立~明治日本の産業革命遺産の価値を広く深く伝えるために、自分にできることを始めて、続けて、やり切りたい~
軍艦島コンシェルジュ取締役統括マネージャー
軍艦島デジタルミュージアムプロデユーサー
Vol.38
産業遺産の主役は「人」~世界遺産登録を経て再認識した故郷の素晴らしさ~
Vol.37
すべては長崎の経済発展のために~海運業の枠を超え、長崎の文化や産業遺産の歴史を伝承~
Vol.36
釜石の奇跡と、震災を乗り越えて~世界遺産登録という大きなチャンス~
Vol.35
韮山反射炉とともに後世に伝えたい「850年の歴史資料」 ~待望の新・収蔵庫が完成、保存・修復・活用に弾み
Vol.34
不屈の開拓精神と先人のパワーで時代を切り拓いた歴史~後世へ受け継がれる希望と大きな力~
Vol.33
軍艦島は「地球と人類の未来への警告のメッセージ」~元島民ガイドが訴える想いと願い~
Vol.32
「シンクロニシティー」が生んだ世界遺産登録という奇跡~想いの強さが志ある人々の共感を呼び起こした!~
エム・アイ・コンサルティンググループ株式会社 代表取締役
Vol.31
日本の人達にパワーを~明治日本の産業革命遺産の使命~
渡辺プロダクショングループ代表・株式会社渡辺プロダクション名誉会長
Vol.30
産業遺産の歩みを"100年後を生きる人々"への希望に
Vol.29
"21世紀の薩摩ステューデント"よ、未来を創れ!~旧集成館は鹿児島観光の情報発信拠点~
Vol.28
各地域に着実に広がる「つながりあるストーリー」という意識~保全管理・インタープリテーションのあり方には課題も~
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Vol.27
《為せば成る為さねば成らぬ何事も》~人とつながるための勇気や行動力を~
特定非営利活動法人 九州・アジア経営塾 理事長兼塾長
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Vol.26
「日本人として、世界に対して誇りを持って発信できる世界遺産」〜内閣官房・有識者会議の流れを決したジャーナリストの視点〜
Vol.25
クラシックカーが「明治日本の産業革命遺産」を走る!~2019年、九州で「ラリーニッポン」を開催~
Vol.24
着々と進む"世界遺産周遊ルート"の整備・振興 ~推進協議会、多彩なプロモーションで世界に向けて魅力発信!~
明治日本の産業革命遺産世界遺産ルート推進協議会会長
一般財団法人産業遺産国民会議理事
(九州旅客鉄道株式会社 相談役)
Vol.23
「遺産観光」の振興に向けたルート整備にいっそうの力を~忘れ難い故郷・呉への空襲と広島原爆の記憶~
一般財団法人産業遺産国民会議 代表理事
(公益財団法人資本市場振興財団 顧問)
Vol.22
世界とつながる町~"長崎のたから"を"世界のたから"へ~
Vol.21
「ICOMOS-TICCIH共同原則」の真価問われる"世界の実験場"~日本政府が推進する新たな保全へのチャレンジ~
Vol.20
忘れ難いS・スミス氏との激論の日々 ~異文化の中で出会った"なじみ深い19世紀の産業遺産"~
Vol.19
歴史や文化を継承することは、次世代の技術革新を生み出す~"使いながら残す"に道を開いた「明治日本の産業革命遺産」~
Vol.18
シリアル登録方式の保全管理に新たな道を拓いた「明治日本の産業革命遺産」-- 今後の大きな課題は「記憶と理解を引き継ぐ人材研修」
ヘリテージ保全並びに世界遺産の専門家としてグローバルに活躍する国際コンサルタント
ダンカン・マーシャル(Duncan Marshall)氏
Vol.17
ジャイアント・カンチレバークレーンと小菅修船場跡の3Dデジタル・ドキュメンテーション
The Glasgow School of Art’s School of Simulation and Visualization、データ・アクイジション責任者
Vol.15
「スコティッシュ・テン プロジェクト」によるデジタル文書化
ヒストリック・スコットランド
スコティッシュ・テン プロジェクト・マネージャー
Vol.14
富士山と韮山反射炉、2つの世界遺産を一望できる茶畑の丘 --次の夢は「子どものためのミニ反射炉」で体験学習
Vol.13
登録までの道のりと資産の今後を見つめて
ロイヤル・カレッジ・オブ・アート副学長・評議会議長
イングランド・ウェールズにおけるカナル&リバートラスト遺産顧問
Vol.12
正確な情報発信の中で、歴史を見つめるきっかけに
Vol.11
「ものづくりの街・北九州」への愛着と誇り--"シビック・プライド"を呼び起こしてくれた世界文化遺産登録
Vol.10
世界遺産登録決定祝賀会レポート(@ドイツ・ボン)
2015年6月28日から7月8日まで、ドイツ・ボンにて第 39 回世界遺産委員会が開催され、「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録が決定しました。
今回は、世界遺産登録決定祝賀会の様子をお伝えいたします。
Vol.9
使いながら保存する-「稼働遺産」の保存・活用に新たな道を拓く
阪神高速道路株式会社 取締役兼常務執行役員
(一般財団法人産業遺産国民会議 理事)
Vol.8
港湾法の体系で、世界遺産の保全を担保する
Vol.7
近代化を切り拓いた長州ファイブと試行錯誤の痕跡を残す萩の資産
Vol.6
日本の「ものづくり」「産業」の原点を伝える「明治日本の産業革命遺産」
Vol.5
日本の近代工業化を石炭産業によって支えた三池エリア
Vol.4
国家、社会のため、広い視野と使命感を持って試行錯誤しつつ挑戦し続けた「明治の産業革命」の意義
文部科学省 生涯学習政策局 生涯学習総括官
前 内閣官房 内閣参事官
Vol.3
「鉄は釜石から八幡へ」 近代製鉄発祥の地から誇り高き文化を伝える
Vol.2
強く豊かな国家を目指して 薩摩藩主島津斉彬が築いた『集成館』
一般財団法人産業遺産国民会議 理事
島津興業 相談役
Vol.1
産業国家日本の原点 『明治日本の産業革命遺産』を次世代へ
「九州・山口の近代化産業遺産群」世界遺産登録推進協議会 会長/鹿児島県知事