吉田松陰や幕末の志士たちの熱き想い、急速な産業化を通して日本を支えた優れた功績 ~ 松陰神社には明治維新に至る歴史をきちんと伝えていく使命がある
プロフィール
昭和16年6月20日生。
昭和39年に國學院大學史学科を卒業。
昭和42年~平成19年 飯山八幡宮宮司
平成13年~平成19年 山口県神社庁長
平成16年~平成19年 神社本庁理事
平成14年~平成22年 長門文化協会会長
平成15年~平成28年 松陰神社宮司
平成22年~平成28年 山口県文化連盟会長
平成22年~平成26年 九州大学人材養成センター非常勤講師
平成24年~平成27年 山口福祉文化大学非常勤講師
平成28年より松陰神社名誉宮司・顧問を務める傍ら
令和3年7月に長門市文化材保護審議会会長に就任。
著作には、『長門市史歴史編』、『長門市史民俗編』『零言集』がある他、
雑誌、会誌、新聞等に論文や随筆を多数寄稿。
世界遺産登録までの経緯を振り返って
加藤 本日はお忙しいところ対談の機会をいただき光栄です。
上田 萩で講演会を開催した昨年の9月以来ですね。あの折には貴重なお話をいただき、ありがとうございました。
加藤 こちらこそお世話になりまして感謝しています。私は松下村塾へ行くたびに心が洗われるような気持ちがするのです。日本の近代の歩みはここから始まったのだと思うと非常に感慨深いものがありまして。吉田松陰先生の志というものが松下村塾での優れた人材の育成につながり、日本人は明治維新を成し遂げた。この事実を後世に伝えたいという想いが「明治日本の産業革命遺産」における原点でした。しかし振り返れば、いろいろな経緯を辿り……。世界登録に向けて走り始めた当初、萩市は城下町で世界遺産の暫定リスト入りを目指していたんです。
上田 そうでしたね。「萩城・城下町及び明治維新関連遺跡群」で山口県と萩市と地元住民が一丸となって文化庁への提案に向けて準備を進めておりました。
加藤 そんな中、産業革命での登録という提案を受けて宮司はどう思われましたか?
上田 正直なところ産業革命という視点を明確に把握することができず戸惑いました。しかし日本の近代化という視点をもって改めて松陰先生の論文を読み直してみたところ、なるほど確かにと深く納得した次第です。松下村塾で海防の必要性や、西洋に学ぶ産業技術の獲得を重視する思想を習得した志士たちが後に明治政府を樹立し、日本の近代化に大きく貢献したことは明白だと。
加藤 そうでしたか。世界遺産登録までの経緯に話を戻しますと、萩では「萩城・城下町及び明治維新関連遺跡群」と「九州・山口近代化遺産群」(のちに「明治日本の産業革命遺産」と改称)の両方で手を挙げるという決断を野村市長がなさり、さまざまな調整を行いながら2007年1月23日の文化審議会の発表の日を迎えました。ところが「九州・山口近代化遺産群」は暫定一覧表に入らず、継続審議となってしまいました。
上田 「萩城・城下町及び明治維新関連遺跡群」との区別化や複数県にまたがる大型プロジェクトである点が課題として残されたように記憶していますが。
加藤 私は野村市長に申し訳なくて、大変に厳しい局面でした。それだけに印象深いのが2月3日に萩で開催された世界遺産シンポジウム。あの日は朝から雪が深々と降り積もっていて、私は灰色の空を仰ぎながら、人が集まってくれるのだろうかと不安でした。ところが会場へ行ってみたらビックリするほど大勢の方が足を運んでくださっていて。これだけ多くの方が関心を寄せてくださるのなら新たに踏み出せると、再起の始まりを予感したのです。
上田 私も会場にいた一人ですが、あの日が転換点だったのですね。
加藤 2月3日のシンポジウムが不発に終わっていたら、文化庁から定義された課題をクリアするという方向へ進めず、「明治日本の産業革命遺産」という形で生まれ変わって歩みを続けることはできなかったと思います。私は転換期を経て、転んでも立ち上がることができるかどうかが重要なのだということを学びました。
上田 人生もまたしかりですね。とはいえ誰にでもできることではないでしょう。よくぞ成し遂げてくださったと心から感謝いたします。
Vol.57
日本の未来のために今を生きる~明治日本の産業革命遺産の使命は「先人のスピリットを活かしていけば日本は救われる」という気づきと勇気を与えること
Vol.56
明治日本の産業遺産は日本の誇り~先人たちの歩みを知ることは日本の教育を見つめ直すことに通じる
フジサンケイグループ 代表
株式会社フジ・メディア・ホールディングス取締役相談役
株式会社フジテレビジョン 取締役相談役
Vol.55
世界遺産登録までの道のりは、山あり谷ありだった~人の縁という運に恵まれ、救われ、道を拓いて~
日本港湾空港建設協会連合会 顧問(元、一般財団法人 港湾空港総合技術センター理事長)
Vol.54
『侍が、カンパニーへ』という歴史的流れは日本の誇り~明治日本の産業遺産の中心的存在である長崎がリードして次世代へつなぐ
Vol.53
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前、佐野常民記念館(現、佐野常民と三重津海軍所跡の歴史館)館長
Vol.52
八幡製鉄所は、今も世界最先端のものづくりを作り続ける現役製鉄所
一般財団法人産業遺産国民会議 理事
特定非営利活動法人 里山を考える会 理事
Vol.51
吉田松陰や幕末の志士たちの熱き想い、急速な産業化を通して日本を支えた優れた功績 ~ 松陰神社には明治維新に至る歴史をきちんと伝えていく使命がある
Vol.50
稼働資産「三池港」を世界遺産にする秘策とは。
Vol. 49
明治日本の産業遺産に関する保全マニュアルの重要性とは?
Vol.48
金属学の視点から紐解いて明らかになった産業史の真実~日本人の聡明さ、勤勉さ、不屈の精神を次世代へ伝えることが明治日本の産業革命遺産の使命~
Vol.47
明治日本の産業革命遺産は偉大な教材、覗けば見えてくる様々な世界
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Vol.46
鹿児島から始まった鉄の歴史が日本の近代化を飛躍的に前進させた~薩摩人のバイタリティを、未来に生きる若い世代に引き継いでいきたい~
Vol.45
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Vol.40
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Vol.24
着々と進む"世界遺産周遊ルート"の整備・振興 ~推進協議会、多彩なプロモーションで世界に向けて魅力発信!~
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Vol.23
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一般財団法人産業遺産国民会議 代表理事
(公益財団法人資本市場振興財団 顧問)
Vol.22
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Vol.21
「ICOMOS-TICCIH共同原則」の真価問われる"世界の実験場"~日本政府が推進する新たな保全へのチャレンジ~
Vol.20
忘れ難いS・スミス氏との激論の日々 ~異文化の中で出会った"なじみ深い19世紀の産業遺産"~
Vol.19
歴史や文化を継承することは、次世代の技術革新を生み出す~"使いながら残す"に道を開いた「明治日本の産業革命遺産」~
Vol.18
シリアル登録方式の保全管理に新たな道を拓いた「明治日本の産業革命遺産」-- 今後の大きな課題は「記憶と理解を引き継ぐ人材研修」
ヘリテージ保全並びに世界遺産の専門家としてグローバルに活躍する国際コンサルタント
ダンカン・マーシャル(Duncan Marshall)氏
Vol.17
ジャイアント・カンチレバークレーンと小菅修船場跡の3Dデジタル・ドキュメンテーション
The Glasgow School of Art’s School of Simulation and Visualization、データ・アクイジション責任者
Vol.15
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ヒストリック・スコットランド
スコティッシュ・テン プロジェクト・マネージャー
Vol.14
富士山と韮山反射炉、2つの世界遺産を一望できる茶畑の丘 --次の夢は「子どものためのミニ反射炉」で体験学習
Vol.13
登録までの道のりと資産の今後を見つめて
ロイヤル・カレッジ・オブ・アート副学長・評議会議長
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Vol.12
正確な情報発信の中で、歴史を見つめるきっかけに
Vol.11
「ものづくりの街・北九州」への愛着と誇り--"シビック・プライド"を呼び起こしてくれた世界文化遺産登録
Vol.10
世界遺産登録決定祝賀会レポート(@ドイツ・ボン)
2015年6月28日から7月8日まで、ドイツ・ボンにて第 39 回世界遺産委員会が開催され、「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録が決定しました。
今回は、世界遺産登録決定祝賀会の様子をお伝えいたします。
Vol.9
使いながら保存する-「稼働遺産」の保存・活用に新たな道を拓く
阪神高速道路株式会社 取締役兼常務執行役員
(一般財団法人産業遺産国民会議 理事)
Vol.8
港湾法の体系で、世界遺産の保全を担保する
Vol.7
近代化を切り拓いた長州ファイブと試行錯誤の痕跡を残す萩の資産
Vol.6
日本の「ものづくり」「産業」の原点を伝える「明治日本の産業革命遺産」
Vol.5
日本の近代工業化を石炭産業によって支えた三池エリア
Vol.4
国家、社会のため、広い視野と使命感を持って試行錯誤しつつ挑戦し続けた「明治の産業革命」の意義
文部科学省 生涯学習政策局 生涯学習総括官
前 内閣官房 内閣参事官
Vol.3
「鉄は釜石から八幡へ」 近代製鉄発祥の地から誇り高き文化を伝える
Vol.2
強く豊かな国家を目指して 薩摩藩主島津斉彬が築いた『集成館』
一般財団法人産業遺産国民会議 理事
島津興業 相談役
Vol.1
産業国家日本の原点 『明治日本の産業革命遺産』を次世代へ
「九州・山口の近代化産業遺産群」世界遺産登録推進協議会 会長/鹿児島県知事