産業遺産の主役は「人」~世界遺産登録を経て再認識した故郷の素晴らしさ~
プロフィール
■釜石市橋野町出身。
「青ノ木主婦の会」での活動を経て
2012年4月に「峠の茶屋」をオープン
■峠の茶屋情報
岩手県釜石市橋野町第2地割ー38番地
0193-57-2005
営業時間11時~15時
完全予約制
アクセス 釜石駅から車で50分
「峠のカレー」が名物だが、その他郷土料理も提供可
人と人を結ぶ「峠の茶屋」の名物カレー
私が営む「峠の茶屋」は橋野インフォメーションセンターから橋野高炉跡へ向かう途中にあります。2012年の4月にオープンした時、私は70歳でした。みなさんビックリなさるけど、私は「まだ70歳なんだから」と思って始めたんですよ。やってよかったなと思ってます。だって、いろいろな人と知り合えて楽しいもの。ここには世界中からいろいろな人が来ます。若い人から老人まで年齢層も広いし、学生さんも社会人も、ご家族で来られる方もいます。でも誰もに共通していることがあるんです。それはお腹が空いているということ。
「峠の茶屋」では世界遺産に登録される前から橋野高炉をイメージして盛りつけた「峠のカレー」をお客様に提供していました。わざわざ遠くから来てくださった方にどこにでもある食事を出すのは悪いな、印象的な食の思い出をお土産に持ち帰ってほしいなと考えて自分で考案したんです。100円ショップで買ってきたコップでライスを型どって、その上に梅酢で赤く色づけしたチョロギをちょこんと乗せて高炉に見立て、店の裏の畑で育てた野菜を添えて。もちろんカレーも手作りです。地元でとれたアカシアのはちみつを入れたり、干し柿を入れたり……。実はとろみにも秘密があるんです。最初は上手くいかなかったけど、お正月の飾り餅を見て「これだ!」と閃いて試してみたらいい感じだったので、以来、お餅を使ってます。労力も採算も度外視。いいと思ったら何でもやってみるんです。
「これで500円ですか? 都会なら3倍くらいしますよ」と言ってくださる方もいますが、私は「美味しい!」と喜んでいただけたら幸せ。「美味しい」は人と人を近づける魔法の言葉ですね。「美味しいです」と声をかけていただくことから会話が始まることが多くて、「どこから来たの?」とか「どんな仕事をしているの?」とか訊いているうちに悩みを打ち明けられることもあります。
このあいだも「転職するか迷いがある」と言う若い方に「なんでもやってみたら?」とアドバイスしたら泣き出してしまって。きっと誰にも言えずにいたのでしょう。私、その時に言いました。「この先だって苦しいことや悲しいことがあるかもしれないけれど、そんな時には橋野高炉でおばあさんが作ったカレーを食べたなと思い出してね」って。ちょっとおこがましいけれど、縁あって出会えた人を応援したいのです。私自身もたくさんの人に支えられて今があるものですから。
(写真)裏の庭で作った無農薬の野菜。形は歪でも味は一級
Vol.57
日本の未来のために今を生きる~明治日本の産業革命遺産の使命は「先人のスピリットを活かしていけば日本は救われる」という気づきと勇気を与えること
Vol.56
明治日本の産業遺産は日本の誇り~先人たちの歩みを知ることは日本の教育を見つめ直すことに通じる
フジサンケイグループ 代表
株式会社フジ・メディア・ホールディングス取締役相談役
株式会社フジテレビジョン 取締役相談役
Vol.55
世界遺産登録までの道のりは、山あり谷ありだった~人の縁という運に恵まれ、救われ、道を拓いて~
日本港湾空港建設協会連合会 顧問(元、一般財団法人 港湾空港総合技術センター理事長)
Vol.54
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Vol.53
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前、佐野常民記念館(現、佐野常民と三重津海軍所跡の歴史館)館長
Vol.52
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特定非営利活動法人 里山を考える会 理事
Vol.51
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忘れ難いS・スミス氏との激論の日々 ~異文化の中で出会った"なじみ深い19世紀の産業遺産"~
Vol.19
歴史や文化を継承することは、次世代の技術革新を生み出す~"使いながら残す"に道を開いた「明治日本の産業革命遺産」~
Vol.18
シリアル登録方式の保全管理に新たな道を拓いた「明治日本の産業革命遺産」-- 今後の大きな課題は「記憶と理解を引き継ぐ人材研修」
ヘリテージ保全並びに世界遺産の専門家としてグローバルに活躍する国際コンサルタント
ダンカン・マーシャル(Duncan Marshall)氏
Vol.17
ジャイアント・カンチレバークレーンと小菅修船場跡の3Dデジタル・ドキュメンテーション
The Glasgow School of Art’s School of Simulation and Visualization、データ・アクイジション責任者
Vol.15
「スコティッシュ・テン プロジェクト」によるデジタル文書化
ヒストリック・スコットランド
スコティッシュ・テン プロジェクト・マネージャー
Vol.14
富士山と韮山反射炉、2つの世界遺産を一望できる茶畑の丘 --次の夢は「子どものためのミニ反射炉」で体験学習
Vol.13
登録までの道のりと資産の今後を見つめて
ロイヤル・カレッジ・オブ・アート副学長・評議会議長
イングランド・ウェールズにおけるカナル&リバートラスト遺産顧問
Vol.12
正確な情報発信の中で、歴史を見つめるきっかけに
Vol.11
「ものづくりの街・北九州」への愛着と誇り--"シビック・プライド"を呼び起こしてくれた世界文化遺産登録
Vol.10
世界遺産登録決定祝賀会レポート(@ドイツ・ボン)
2015年6月28日から7月8日まで、ドイツ・ボンにて第 39 回世界遺産委員会が開催され、「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録が決定しました。
今回は、世界遺産登録決定祝賀会の様子をお伝えいたします。
Vol.9
使いながら保存する-「稼働遺産」の保存・活用に新たな道を拓く
阪神高速道路株式会社 取締役兼常務執行役員
(一般財団法人産業遺産国民会議 理事)
Vol.8
港湾法の体系で、世界遺産の保全を担保する
Vol.7
近代化を切り拓いた長州ファイブと試行錯誤の痕跡を残す萩の資産
Vol.6
日本の「ものづくり」「産業」の原点を伝える「明治日本の産業革命遺産」
Vol.5
日本の近代工業化を石炭産業によって支えた三池エリア
Vol.4
国家、社会のため、広い視野と使命感を持って試行錯誤しつつ挑戦し続けた「明治の産業革命」の意義
文部科学省 生涯学習政策局 生涯学習総括官
前 内閣官房 内閣参事官
Vol.3
「鉄は釜石から八幡へ」 近代製鉄発祥の地から誇り高き文化を伝える
Vol.2
強く豊かな国家を目指して 薩摩藩主島津斉彬が築いた『集成館』
一般財団法人産業遺産国民会議 理事
島津興業 相談役
Vol.1
産業国家日本の原点 『明治日本の産業革命遺産』を次世代へ
「九州・山口の近代化産業遺産群」世界遺産登録推進協議会 会長/鹿児島県知事