日本の未来のために今を生きる~明治日本の産業革命遺産の使命は「先人のスピリットを活かしていけば日本は救われる」という気づきと勇気を与えること
プロフィール
生年月日: 昭和28年11月生まれ
出身 : 長崎県長崎市(紺屋町)
・ 東京大学工学部船舶工学科卒業
・ 東京大学大学院工学系研究科修了、工学博士
昭和53年 4月 三菱重工業入社
平成15年12月 長崎造船所 造船設計部長
平成20年10月 長崎造船所 副所長
平成23年 4月 執行役員 船舶・海洋事業本部, 副事業本部長 兼 船舶海洋技術総括部長
平成24年 4月 執行役員 船舶・海洋事業本部, 副事業本部長 兼 長崎造船所長
平成25年10月 執行役員 交通・輸送ドメイン 副ドメイン長
平成26年 4月 顧問(常勤)
平成31年 1月 長崎大学大学院工学研究科 教授
令和5年 4月 株式会社 大島造船所 特別顧問(兼務)
主な兼職
・公益社団法人 日本船舶海洋工学会(JASNAOE) 会長
・一般財団法人 日本船舶技術研究協会(JSTRA) 理事
・一般財団法人 次世代環境船舶開発センター(GSC)評議員
・一般財団法人 産業遺産国民会議 理事
・学校法人 長崎総合科学大学大学院 客員教授
速やかに、実務的に、実践的に。
加藤 橋本先生には、明治日本の産業革命遺産のガイドブック・造船編として出版した「船がわかる本」にてご執筆頂き有難うございました。三菱重工長崎造船所の設備を管理監督、運営する部署で所長を務められた先生の解説により、日本における造船業の現状を知ることができました。また、現在は長崎大学で教鞭をとられるなど人材育成にも力を注いでおられるということで、今日はお話を伺うのを楽しみにしておりました。
橋本 こちらこそ、よろしくお願いします。
加藤 まず世界遺産登録までの道のりについてなのですが、最初に三菱造船所の設備を世界遺産の構成資産にということを申し上げた時には大きな壁がありました。
橋本 世界遺産に登録されるのは名誉なことだと誰もが感じていたと思います。ただ遺産という言葉からは既に終わったものといったイメージを抱いてしまいがちで、造船所の稼働を止めなくてはいけないのではないか? と危惧する声があがっていたのは事実です
加藤 稼働資産としての登録であることをお伝えしてからも、なかなか良いお返事がいただけなかったと記憶しています。
橋本 そうでしたね。当時、加藤さんが幾度も来られて細かなことまで説明してくださいました。しかし、あの頃は稼働資産のままでよいとしても制約がかかるのではないかと……。今にして思えばYESとかNOという以前に、誰もが良く理解していなかったというのが正直なところだったのです。
加藤 橋本先生はどう受けとめておられましたか?
橋本 私にしてもストーリーを持った世界遺産であることを理解するための知識というか認識がありませんでした。しかし次第にこういう新しいコンセプトの世界遺産登録があるのかと理解し、そこからは所内の人間にも前向きに検討したらどうかと話すようになりました。そうしたところ長崎造船所のしてきたことが高く評価されるのであれば賛成するという意見が非常に多くなったのです。
加藤 そもそも長崎造船所内に設置された第一、第二、第三の3ドックにそれほどの価値があるのかと考えておられた方が少なくないようでした。
橋本 実は私もそう思っていました。100年以上も経過している古いドックで、ほとんど修繕作業にしか使っていないものですから。そこで独自に調べてみたところ、アメリカの土木学会に発表したというドックについての論文が出てきました。このことによって当時としては画期的なものであり、技術的にもレベルの高いものだったのだなと、つまり産業遺産としての価値が十分にあることを再認識したのです。
加藤 イコモスの査定官であるオーストラリアのサラ・ジェーンさんをお迎えするにあたり、現場の皆様が相当に頑張ってくださいました。英語ですべて完璧にプレゼンするといった意気込みを拝見して、三菱というのはインターナショナルな会社で、国際的な事業契約をつめることに慣れておられるなと、これは直感的感じたことです。
橋本 取引をするまでの間に技術的な契約書やテクニカルドキュメントをたくさん作りますので。法律的なことに関しても、こうした場合にはと想定できる限りの幾つもの場面を取り上げ、細かく記されていたと思います。
加藤 CMP (Conservation Management Plan : 管理保全計画)を制作するにしても、主語を明確に、責任の所在を明確にというのが三菱流の文書の書き方で、これは非常に勉強になりました。行政の作るCMPというのは受動態の文章であることが多く、何を言いたいのかわからないというケースが目立ちます。たとえば行政が主体となって、それまでの文化財の考え方で管理保全計画を作成したものなどは、イデオロギーの部分がかなり強くて、どこからどこまで保全をすればいいのかという重要なところがフワッとしていました。私は文化庁の壁を超えることのほうが大変そうだなと思ったのですが、はたしてその通りになりました。
橋本 もちろん三菱にも観念的な傾向はありましたが、観念的なままでは形にすることはできませんので。
加藤 三菱造船所のイデオロギーについては社史がきちんとまとまっていて、そちらのほうからしっかりと感じ取ることができました。もっとも、はじめて占勝閣と資料館に伺った時に、日本に語るべき歴史そのものが残っていると心から感じましたけれど。いずれにしても、言葉にならないプライドというものが構築され、整理されていたからこそ、ならば具体的にどう守っていくのかというところへ速やかに、実務的に、実践的につめていくことができたのだと私は思うのです。
橋本 そう言っていただけると嬉しいですね。
Vol.57
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フジサンケイグループ 代表
株式会社フジ・メディア・ホールディングス取締役相談役
株式会社フジテレビジョン 取締役相談役
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今回は、世界遺産登録決定祝賀会の様子をお伝えいたします。
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Vol.5
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