明治日本の産業革命遺産
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PEOPLE

2016.03.07
Vol.7

近代化を切り拓いた長州ファイブと試行錯誤の痕跡を残す萩の資産

野村 興兒 氏

萩市長

野村 興兒 氏
プロフィール

生年月日  1944年(昭和19年)7月29日

最終学歴  京都大学経済学部経済学科卒業 
(1967年・昭和42年3月)


略  歴 

 大蔵省入省 主計局調査課 (1967年・昭和42年4月)

 鳥取税務署長 (1972年・昭和47年7月)

 ハーバード大学ロースクール留学(1975年・昭和50年9月)

 主計局主計官補佐 (1979年・昭和54年7月)

 大臣官房企画官 (1981年・昭和56年7月)

 大阪国税局査察部長 (1983年・昭和58年6月)

 主税局税制第3課長 (1987年・昭和62年8月)

 主税局税制第2課長 (1989年・平成元年6月)

 国税庁長官官房総務課長 (1990年・平成2年6月)

 福岡国税局長 (1991年・平成3年6月)

 国税庁調査査察部長 (1992年・平成4年6月)

 萩市長(1993年・平成5年10月18日~平成17年3月5日)3期


現  職

萩市長(2005年・平成17年3月27日~) 3期目

※平成17年3月6日、7市町村による合併 新市発足

全国伝統的建造物群保存地区協議会会長

(1993年・平成5年10月18日~)

全国中山間地域振興対策協議会会長

(2010年・平成22年6月7日~)

全国街道交流会議 街道交流首長会会長

(2011年・平成23年6月7日~)

全国市長会相談役

(2011年・平成23年6月8日~)

全国離島振興協議会理事

(1996年・平成8年4月1日~)

全国漁港漁場協会副会長理事

(2009年・平成21年5月30日~)

全国山村振興連盟山口県支部長

(2008年・平成20年3月21日~)

全国防災協会理事

(2006年・平成18年6月16日~)

全国治水砂防協会評議員

(2006年・平成18年2月28日~)

(但し、2009年・平成21年6月1日~2011年・平成23年5月31日の間は理事)

山口県後期高齢者医療広域連合連合長

(2007年・平成19年2月14日~)

山口県漁港漁場協会会長

(2000年・平成12年8月25日~)

山口県離島振興協議会会長

(1997年・平成9年4月1日~)

山口県史跡整備市町協議会会長

(2003年・平成15年7月30日~)

山口県過疎地域対策促進協議会会長

(2008年・平成20年3月21日~)

                   等

――「明治日本の産業革命遺産」の23の構成資産の中で、萩には5つの資産があります。

 産業革命の初期段階、試行錯誤の時代を示しているのが萩の資産です。吉田松陰は、欧米列強の強圧的なアジア政策に対峙し、日本の独立を守るためには強大な工業力を身につけなければならないと考えました。これが松下村塾の最大のテーマであり、「松下村塾から日本の近代化が始まった」と言われる所以です。欧米列強と日本との、天と地ほどの技術力の差を埋めるために、松陰自らアメリカに渡って実情を学ぼうとしますが、果たせませんでした。そこで松陰は門下生と共に海外情報を学び、欧米の技術の導入の必要性を説きます。松陰が亡くなった4年後、門下生の伊藤博文はじめ松陰の考え方に影響を受けた井上馨、遠藤謹助、山尾庸三、井上勝の5人の長州藩士が、松陰の遺志を継ぎ、国禁を犯すという大きなリスクを背負って長州藩から英国に密航留学し、UCL(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)などに学びました。横浜港からの出航は、1863(文久3)年5月12日 、馬関攘夷戦争開始からわずか2日後のことです。

――井上馨は外交、遠藤謹助は造幣、山尾庸三は工学、伊藤博文は憲法制定・議会政治・政党内閣、そして井上勝は鉄道の「父」と言われています。

 工学の父といわれる山尾庸三は工部大学校の建学に貢献しました。UCLで学んだ後、産業革命発祥の地であり造船業が盛んなスコットランドのグラスゴーのことを知り、グラスゴーへ渡り技術を学びたいと願います。しかし、長州藩からの留学資金は底をつき、行くためのお金がありませんでした。その山尾庸三を助けたのが、薩摩スチューデント達だったのです。

――長州ファイブ渡欧から1年半後の1865(元治2)年4月、薩摩藩からイギリスへ送られた19人の留学生で、初代文部大臣の森有礼や、大阪の経済発展に貢献した五代友厚などもいました。

 庸三達は彼らと親交を結んでいました。そこで、薩摩藩の彼らは庸三のために、一人1ポンドずつカンパし、16ポンドを庸三に渡します。薩長同盟以前に、長州と薩摩の交流は、このような形で行われていたのです。庸三は、昼間はネピア造船所で働き、アンダーソンカレッジ(夜学)に通います。不思議な出会いですが、工部大学校の初代都検(校長)の技師ヘンリー・ダイアーも、実は同じ時期に同じカレッジで学んでいたことが分かりました。ダイアーは9年間日本人教育に力を注ぎます。その工部大学校が後になり、東京大学の工学部へと変わります。

 山尾庸三は、帰国後に、工部卿となり、伊藤博文や井上馨もいろいろな形で支援しました。今世界には、マサチューセッツ工科大学など有名な工科大学もありますが、当時、発足したばかりで、世界の大学の潮流はサイエンスが中心で、エンジニアリングの分野はその下に位置づけられるのが通例でした。しかし、日本の大学は、サイエンスと工学部が同じように位置づけられていたのです。これは、松陰が門下生に工学教育の重要性を説いた松下村塾の1つの大きな影響力といえると思います。

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Vol.57
日本の未来のために今を生きる~明治日本の産業革命遺産の使命は「先人のスピリットを活かしていけば日本は救われる」という気づきと勇気を与えること

元、三菱重工長崎造船所所長

橋本 州史
Vol.56
明治日本の産業遺産は日本の誇り~先人たちの歩みを知ることは日本の教育を見つめ直すことに通じる

フジサンケイグループ 代表

株式会社フジ・メディア・ホールディングス取締役相談役

株式会社フジテレビジョン 取締役相談役

日枝 久
Vol.55
世界遺産登録までの道のりは、山あり谷ありだった~人の縁という運に恵まれ、救われ、道を拓いて~

日本港湾空港建設協会連合会 顧問(元、一般財団法人 港湾空港総合技術センター理事長)

林田 博
Vol.54
『侍が、カンパニーへ』という歴史的流れは日本の誇り~明治日本の産業遺産の中心的存在である長崎がリードして次世代へつなぐ

長崎市長

鈴木史郎
Vol.53
日本で初めて反射炉を作った佐賀藩、洋式海軍の拠点だった「三重津海軍所」~世界遺産登録に注いだ情熱を次世代に繋ぎたい。

前、佐野常民記念館(現、佐野常民と三重津海軍所跡の歴史館)館長

江口 善己
Vol.52
八幡製鉄所は、今も世界最先端のものづくりを作り続ける現役製鉄所 

一般財団法人産業遺産国民会議 理事
特定非営利活動法人 里山を考える会 理事

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Vol.51
吉田松陰や幕末の志士たちの熱き想い、急速な産業化を通して日本を支えた優れた功績 ~ 松陰神社には明治維新に至る歴史をきちんと伝えていく使命がある

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Vol.50
稼働資産「三池港」を世界遺産にする秘策とは。

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古賀 道雄
Vol. 49
明治日本の産業遺産に関する保全マニュアルの重要性とは? 

考古学者・遺産保存に関する国際コンサルタント

マイケル・ピアソン博士 
Vol.48
金属学の視点から紐解いて明らかになった産業史の真実~日本人の聡明さ、勤勉さ、不屈の精神を次世代へ伝えることが明治日本の産業革命遺産の使命~

日本工学会フェロー

稲角 忠弘
Vol.47
明治日本の産業革命遺産は偉大な教材、覗けば見えてくる様々な世界

元新日本製鐵株式会社社員、世界遺産登録推進室産業プロジェクトチームメンバー

菅 和彦
Vol.46
鹿児島から始まった鉄の歴史が日本の近代化を飛躍的に前進させた~薩摩人のバイタリティを、未来に生きる若い世代に引き継いでいきたい~

鹿児島県知事

塩田 康一
Vol.45
吉田松陰が工業教育論を説き、命がけで英国へ渡った長州ファイブを輩出~誇らしき萩スピリットを後進へとつなげるために~

萩市長

田中 文夫 氏
Vol.44
三角西港を作った先人の知恵、技術、行動力を子供たちの代へと継承していきたい~コロナ後も続く未来を見据えて今できることに全力で取り組む~

熊本県宇城市長

守田 憲史 氏
Vol.43
官営八幡製鐵所は「1枚の古写真」から世界遺産になった!~元日鉄マンが明かす、"登録前夜"のとっておきのエピソード~

元新日本製鐵株式会社社員

水口 政義 氏(みなくちまさよし)
Vol.42
外に向かって発信する「新しい地元学」を確立したい ~「釜石の誇り」から「日本・世界の中の釜石の誇り」へ!~

岩手大学理工学部 准教授

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Vol.41
観光ガイド歴18年、あふれ出る"三角西港愛"~世界遺産登録はゴールではなく、新たな出発点~

三角西港観光ガイドの会 会長

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Vol.40
韮山反射炉とともに「刻」をきざむ~物産館&レストラン事業で"反射炉観光"の魅力度アップ~

株式会社蔵屋鳴沢 代表取締役社長

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稲村 浩宣 氏
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運命に導かれて軍艦島デジタルミュージアムを設立~明治日本の産業革命遺産の価値を広く深く伝えるために、自分にできることを始めて、続けて、やり切りたい~

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Vol.37
すべては長崎の経済発展のために~海運業の枠を超え、長崎の文化や産業遺産の歴史を伝承~

やまさ海運株式会社会長

やまさ海運株式会社社長

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Vol.36
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宝来館 女将

岩崎 昭子 氏
Vol.35
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江川家42代当主

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Vol.34
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Vol.32
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エム・アイ・コンサルティンググループ株式会社 代表取締役

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Vol.31
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三反園 訓 氏
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世界遺産コンサルタント

サラ・ジェーン・ブラジル(Sarah Jane Brazil)氏
Vol.27
《為せば成る為さねば成らぬ何事も》~人とつながるための勇気や行動力を~

特定非営利活動法人 九州・アジア経営塾 理事長兼塾長

株式会社SUMIDA 代表取締役

橋田 紘一 氏
Vol.26
「日本人として、世界に対して誇りを持って発信できる世界遺産」〜内閣官房・有識者会議の流れを決したジャーナリストの視点〜

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石原 進 氏
Vol.23
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保田 博 氏
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田上 富久 氏
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Vol.20
忘れ難いS・スミス氏との激論の日々 ~異文化の中で出会った"なじみ深い19世紀の産業遺産"~

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バリー・ギャンブル(Barry Gamble)氏
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Vol.18
シリアル登録方式の保全管理に新たな道を拓いた「明治日本の産業革命遺産」-- 今後の大きな課題は「記憶と理解を引き継ぐ人材研修」

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Vol.16
日本で注目される「産業遺産」

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Vol.15
「スコティッシュ・テン プロジェクト」によるデジタル文書化

ヒストリック・スコットランド

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リン・ウィルソン博士
Vol.14
富士山と韮山反射炉、2つの世界遺産を一望できる茶畑の丘 --次の夢は「子どものためのミニ反射炉」で体験学習

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ニール・コソン卿
Vol.12
正確な情報発信の中で、歴史を見つめるきっかけに

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Vol.11
「ものづくりの街・北九州」への愛着と誇り--"シビック・プライド"を呼び起こしてくれた世界文化遺産登録

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Vol.10
世界遺産登録決定祝賀会レポート(@ドイツ・ボン)

2015年6月28日から7月8日まで、ドイツ・ボンにて第 39 回世界遺産委員会が開催され、「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録が決定しました。

今回は、世界遺産登録決定祝賀会の様子をお伝えいたします。

<世界遺産登録の舞台裏>
Vol.9
使いながら保存する-「稼働遺産」の保存・活用に新たな道を拓く

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(一般財団法人産業遺産国民会議 理事)

岡本 博 氏
Vol.8
港湾法の体系で、世界遺産の保全を担保する

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難波 喬司 氏
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近代化を切り拓いた長州ファイブと試行錯誤の痕跡を残す萩の資産

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国家、社会のため、広い視野と使命感を持って試行錯誤しつつ挑戦し続けた「明治の産業革命」の意義

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Vol.3
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Vol.2
強く豊かな国家を目指して 薩摩藩主島津斉彬が築いた『集成館』

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Vol.1
産業国家日本の原点 『明治日本の産業革命遺産』を次世代へ

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伊藤 祐一郎 氏