「シンクロニシティー」が生んだ世界遺産登録という奇跡~想いの強さが志ある人々の共感を呼び起こした!~
エム・アイ・コンサルティンググループ株式会社 代表取締役
■“九州財界応援団長”の橋田紘一さんを紹介
--それと、九州の政財界の実力者にもお取り次ぎいただいたそうですね。
大上 はい。私は北九州の出身でして、そのため現在も北九州市の参与をしている関係で、福岡や北九州には人脈があるんですよ。そこで、当時九電工社長だった橋田紘一さん(現特定非営利活動法人九州・アジア経営塾理事長兼塾長)にご紹介したんです。そうしたら次には橋田さんが音頭を取って、JR九州社長だった石原進さん(現相談役、産業遺産国民会議理事)をはじめとする地元九州の強力な応援団を結成されることになったんです。
--いわば“影の参謀”として、推進母体のコアとなる方々をご紹介してくださったというわけですね。
大上 私の役割はそこでもう終わったんですよ(笑)。加藤さんはあの頃ちょうど、そうやって突破口を切り開こうとしていた時期だった。うまくタイミングが合ったんですね。
--その後、「明治日本の産業革命遺産」は本欄でも度重ねて紹介しているように、国内外でさまざまな困難にぶつかりながらも、難題を1つひとつ乗り越えて、2015年にユネスコ世界文化遺産に登録されることになりました。その後の大上さんの役割はどういったものだったのでしょうか。
大上 これ以降はもう、私が直接関わることはありませんでした。もっぱら加藤さんの愚痴の聞き役に徹しておりました(笑)。いつも、いきなり電話が掛かってくる。パソコンに向かいながらスピーカーホンに切り換えて生返事をしていると、「ちょっと、ちゃんと聞いているの!」と突っ込まれたりしてね(笑)。それはさておき、加藤さんはこんな困難な大仕事をよくぞ実現させたものだ、と今更ながらに感心していますよ。
--ということは、初めて構想を聞かれた時には「これは難しいんじゃないか」といった危惧を持たれた……。
大上 テーマとしては面白いし、私の地元の北九州も絡む話だし、私もできるだけご協力しようと考えました。が、率直に言って「奇跡でも起きない限り、無理じゃないかな」とも思いました。
けれども、実際に奇跡は起きた、それも2回も。いわば予選である国内の審議では省庁間の厚い壁に行く手を阻まれ、本選のユネスコの委員会では韓国の激しい妨害工作に直面した。この2つの壁を、加藤さんは多くの人たちを巻き込みながら、その力を結集して乗り越えたんですからね。これは奇跡と言ってもいいほどの功績じゃないでしょうか。
--大上さんとの出会いも1つの奇跡かもしれませんね。北九州ご出身で土地勘と人脈がある専門コンサルタントの方が絶妙なタイミングで“出現”されたんですから。
大上 確かにね。今から思うと、あの頃は比較的時間にも余裕があった。本業のかたわら、規制改革委員会のメンバーもやらせていただき、前出の和泉さんとも霞ヶ関の合同庁舎の和泉さんの部屋で地域興しについて、よく議論をさせていただいたりしていましたから、加藤さんのお話を伺い、いろいろな人にご紹介することもできた。
現在、私はご縁があって測量機器や医療機器を手掛ける大手光学機器メーカーの株式会社トプコンの常務事業本部長を務めていて、自分のコンサルティング事務所の方はスタッフに任せているような状態でして、多忙を極めているんです。今だったら、とてもあんな風にお付き合いはできなかったろうと思います。
--モノ作りに精通したコンサルタントとして、「産業遺産」という概念にビビッドに反応されたという面もあったんでしょうか。
大上 えぇ、とても大事なものだということはすぐにピンときましたね。実際、あの頃、コソン卿を私の主宰するランチョン・セミナーの講師にお呼びしたこともあったくらいです。
まさに「シンクロニシティー」ということなのではないでしょうか。志を同じくする人たちが集まって、より力を増して最後は社会を動かす。これは決して偶然の出会いなのではなく、発信力のある人間が周辺の人たちを呼び込み、その人たちがさらに自分の周りの人たちに伝えていく。そういう関係性を3クッション、4クッション経れば、必ず最初の発信者の「想い」に共感する人が現れて協力したり、あるいは思わず引きずり込まれていく(笑)。加藤さんにはそんな力があるように思います。それだけ「想い」が強いということでしょう。
Vol.58
世界遺産を守っていくために必要なのは本質的なことを見落とさない視点
一般財団法人長崎ロープウェイ・水族館理事長
前、長崎市世界遺産推進室室長
Vol.57
日本の未来のために今を生きる~明治日本の産業革命遺産の使命は「先人のスピリットを活かしていけば日本は救われる」という気づきと勇気を与えること
Vol.56
明治日本の産業遺産は日本の誇り~先人たちの歩みを知ることは日本の教育を見つめ直すことに通じる
フジサンケイグループ 代表
株式会社フジ・メディア・ホールディングス取締役相談役
株式会社フジテレビジョン 取締役相談役
Vol.55
世界遺産登録までの道のりは、山あり谷ありだった~人の縁という運に恵まれ、救われ、道を拓いて~
日本港湾空港建設協会連合会 顧問(元、一般財団法人 港湾空港総合技術センター理事長)
Vol.54
『侍が、カンパニーへ』という歴史的流れは日本の誇り~明治日本の産業遺産の中心的存在である長崎がリードして次世代へつなぐ
Vol.53
日本で初めて反射炉を作った佐賀藩、洋式海軍の拠点だった「三重津海軍所」~世界遺産登録に注いだ情熱を次世代に繋ぎたい。
前、佐野常民記念館(現、佐野常民と三重津海軍所跡の歴史館)館長
Vol.52
八幡製鉄所は、今も世界最先端のものづくりを作り続ける現役製鉄所
一般財団法人産業遺産国民会議 理事
特定非営利活動法人 里山を考える会 理事
Vol.51
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Vol.50
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Vol. 49
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ジャイアント・カンチレバークレーンと小菅修船場跡の3Dデジタル・ドキュメンテーション
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富士山と韮山反射炉、2つの世界遺産を一望できる茶畑の丘 --次の夢は「子どものためのミニ反射炉」で体験学習
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Vol.12
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Vol.11
「ものづくりの街・北九州」への愛着と誇り--"シビック・プライド"を呼び起こしてくれた世界文化遺産登録
Vol.10
世界遺産登録決定祝賀会レポート(@ドイツ・ボン)
2015年6月28日から7月8日まで、ドイツ・ボンにて第 39 回世界遺産委員会が開催され、「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録が決定しました。
今回は、世界遺産登録決定祝賀会の様子をお伝えいたします。
Vol.9
使いながら保存する-「稼働遺産」の保存・活用に新たな道を拓く
阪神高速道路株式会社 取締役兼常務執行役員
(一般財団法人産業遺産国民会議 理事)
Vol.8
港湾法の体系で、世界遺産の保全を担保する
Vol.7
近代化を切り拓いた長州ファイブと試行錯誤の痕跡を残す萩の資産
Vol.6
日本の「ものづくり」「産業」の原点を伝える「明治日本の産業革命遺産」
Vol.5
日本の近代工業化を石炭産業によって支えた三池エリア
Vol.4
国家、社会のため、広い視野と使命感を持って試行錯誤しつつ挑戦し続けた「明治の産業革命」の意義
文部科学省 生涯学習政策局 生涯学習総括官
前 内閣官房 内閣参事官
Vol.3
「鉄は釜石から八幡へ」 近代製鉄発祥の地から誇り高き文化を伝える
Vol.2
強く豊かな国家を目指して 薩摩藩主島津斉彬が築いた『集成館』
一般財団法人産業遺産国民会議 理事
島津興業 相談役
Vol.1
産業国家日本の原点 『明治日本の産業革命遺産』を次世代へ
「九州・山口の近代化産業遺産群」世界遺産登録推進協議会 会長/鹿児島県知事