"21世紀の薩摩ステューデント"よ、未来を創れ!~旧集成館は鹿児島観光の情報発信拠点~
■英国マンチェスター市等と友好協定、若者たちの人材交流を推進
加藤:集成館は「モノづくり国家・ニッポンの原点」ですからね。それにも関連しますが、三反園知事は最近、いわゆる「薩摩ステューデント」の復活に力を入れて取り組んでおられるそうですね。
三反園:はい、そうなんです。薩摩ステューデントは、薩英戦争に敗れた薩摩藩がイギリスの技術や社会の仕組みを学ばせようと、国禁を犯して留学生として送り込んだ15人の若き薩摩藩士のことで、その引率者の一人はNHKの朝ドラで一躍有名になった五代友厚です。
この先例にならって、県では今年度、「明治維新150周年記念 薩摩ステューデント派遣事業」と名付けた国際交流事業を企画し、7月に県内から選抜した15人の高校生をイギリスに派遣しました。現地では、かつての薩摩ステューデントが留学したロンドンの大学を訪ねて、今も残されている彼らの成績簿を見せてもらったり、マンチェスター市では当時の紡績機械を見学したりと、幕末の薩摩ステューデントの足跡に触れて来てもらいました。未来を担う若い高校生たちにいろいろなことを経験する機会を提供しようという狙いです。
加藤:忘れられない経験になったことでしょうね。私も繊維の街として繁栄したマンチェスターに行ったことがあるのですが、往時の紡績工場などの産業遺産をヒストリカル・モニュメントとして今の街づくりに生かしていて、とても趣のある素敵な街ですよね。
実は集成館にも、富岡製糸場よりも早く西洋の繊維技術を取り入れた紡績工場があったんですよね。その意味では、マンチェスターと鹿児島は繊維産業についても繋がりがあるわけですね。
三反園:まさに薩摩ステューデントが繋いだご縁なのですよ。私も先般、マンチェスター市やロンドン市カムデン区を訪ねて市区長さんとお会いし、「明治150周年」を記念して両市区と友好協定を結びました。若い人たちの人的交流を積極的に進めていくことで合意して、具体的な事業内容の検討を始めたところです。
加藤:素晴らしい取り組みですね。今から成果が楽しみです。これを機に、イギリス-鹿児島間の直行便も開設したいものですね。イギリスには薩摩のことが好きな人達が結構いるので、チャンス到来じゃないですか(笑)。
三反園:そうですね、直行便を飛ばしてくれるエアラインがあれば大歓迎なんですが……。イギリスでは、温州みかんのことを「Satsuma」と呼ぶんだそうですよ。
加藤:私が聞いたところによると、薩英戦争の賠償交渉の時に日本産みかんを「サツマ」と呼ぶようになったらしいですよ。
私、この間、カナダのオタワで講演させていただいたんですが、講演が終わった後である中国人留学生が近づいて来て、「僕は薩摩人になるのが夢なんです」って言ったんですよ。「日本人」ではなくて、「薩摩人」って言ったから、ビックリしました(笑)。それくらいに世界中で「薩摩」は知られているんです。
三反園:それは有り難い話ですね。
加藤:薩摩は日本の近代史そのものですから。知事にはもっともっと頑張って薩摩のことをPRしていただいて、薩摩の知名度を高めてほしいと期待しています(笑)。
三反園:ご案内のように、県では現在、国や沖縄県と共同で「奄美大島、徳之島、沖縄北部及び西表島」をユネスコ世界自然遺産に登録しようと活動しています。今年のIUCN(世界自然保護連合)では「記載延期」勧告を受けましたが、県では引き続き、東京五輪・パラリンピックが開催される2020年の登録実現を目指して努力を続けています。
加藤:これが実現すれば、「明治日本の産業革命遺産」と「屋久島」と「奄美群島」と世界遺産が3つになる。こんな地域は他にはないですよね。
三反園:少なくとも世界自然遺産が2つある地域は、本県が初めてということになります。当初の目論見よりは遅れる結果になりましたが、東京五輪の時に実現すれば、かえってインパクトがあるかもしれない。そう考えて、気合いを入れ直しているところです。
加藤:そうなれば、さらにインバウンド効果も期待できるようになりますね(笑)。
三反園:安倍政権は観光振興、そして農産品や水産品の輸出振興に力を入れて取り組んでいるわけですが、このことは観光資源だけでなく、農林畜産資源・水産資源にも恵まれた本県にとってはまたとない追い風になっています。
「明治日本の産業革命遺産」などの歴史文化遺産や「屋久島」,「奄美」の自然遺産に加えて、温泉もたくさんあるし、ブリ、カンパチ、ウナギの生産量は日本一、かごしま黒豚もあれば、日本一の鹿児島黒牛もある。農業産出額は全国第3位。これだけ「食に関する日本一」がたくさんある県は他にありません(笑)。その意味で、本当に「価値のある県」なんだと自負しています。観光によるインバウンド効果をバネに、こうした豊かな農産物、水産物の輸出もさらにどんどん増やしていきたいと考えています。
加藤:確かに今、世界では「Wagyu」で通じるようになっていますよね。この前、ワシントンDCのレストランのメニューに「Wagyu」と出ていて、さすがに驚きました(笑)。
三反園:それが日本産かどうかはわかりませんけどね。オーストラリアでは世界的な和牛人気に乗じて、和牛をブランド化して「オーストラリア産和牛」の輸出に力を入れています。鹿児島県はそのオーストラリアに初めて、正真正銘の「鹿児島産和牛」を輸出したんです。世界に輸出している日本産和牛の多くが本県産なんですよ。北米でも、香港、台湾でもそうなんです。価格は確かに高いけれども、品質が全く違う。こうした高級肉を求める消費者層が世界中で着実に増えているということだと思います。
加藤:なるほど。牛肉なら高級和牛といったように、市場の最上位の部分にターゲットを絞ってその市場を制していくというのは、すごい戦略です。歴史的に見ても、薩摩は日本を変えるDNAを持っていると言えますね。
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