強く豊かな国家を目指して 薩摩藩主島津斉彬が築いた『集成館』
一般財団法人産業遺産国民会議 理事
島津興業 相談役
――2000年3月、島津興業が主催していた「磯の歴史と文化を活かす研究会」で、加藤専務理事が産業遺産の講演を行いました。
島津理事:加藤専務理事には「観光資源としての産業遺産 日本の近代化は鹿児島からはじまった……」というテーマで講演を行っていただきました。その後、加藤専務理事から世界遺産プロデューサーで、産業遺産としての世界遺産第一号であるアイアンブリッジ峡谷博物館の館長を務められていたスチュワート・B・スミス先生をご紹介いただき、2002年10月、第2回「薩摩ものづくり」シンポジウムで特別講演を行っていただきました。スミス先生は国際産業遺産保存委員会(TICCIH)事務局長で、産業遺産の世界的権威でもあります。スミス氏と加藤専務理事はシンポジウムの前に、九州の産業遺産を調査し、スミス氏は九州の産業遺産の価値を高く評価するとともに、シンポジウムでは「九州にある遺産を統合し、日本の近代化としてまとめれば世界遺産となる可能性がある」と発言されました。
翌年の2003年9月、加藤専務理事が北海道庁と協力し、国際鉱山ヒストリー会議赤平大会を誘致した際には、スミス先生他、世界の専門家が赤平に集合しました。その後のオプションツアーで九州の産業遺産を視察し、鹿児島を訪れたドイツのユネスコ委員のバージッタ・リングベック博士が九州地区の産業遺産をグループ化し、シリアルノミネーションとして世界遺産登録を目指すことを提案されたのです。これが、「明治日本の産業革命遺産」のはじまりです。その後、加藤専務理事の豊かな海外人脈によって、「世界遺産」への扉が大きく開かれていったのです。
――1999年から16年もの長きに渡り、世界遺産登録を推進してきた島津理事は、登録後の現在、産業遺産国民会議の理事として各地で講演を行うなど、さまざまな活動に取り組んでいます。今年11月には、韮山反射炉のある静岡県が主催する「ふじのくに交流会」で「明治日本の産業革命遺産」をテーマに講演を行う予定ですが、島津理事は川勝知事とともに勉強会を開かれているそうですね。
島津理事:勉強会は2001年にはじまりました。この年、集成館事業150周年記念の記念行事に川勝知事をお招きして、基調講演を行っていただきました。当時は知事になられる前で、国際日本文化研究センターの教授を務め、「海洋史観」の専門家としてご活躍されていました。基調講演で「薩摩はまさに海洋国家だった」というお話を伺い、川勝先生の多岐に亘る学識と時代への深い洞察力に学び、地域づくりに役立てたい、ふるさと「鹿児島の自然や歴史を見つめなおし、地域の進むべき方向・将来への視点を見いだそうと、川勝先生を中心に「有徳塾」という勉強会を鹿児島でつくりました。先生を中心にゲスト講師を交えた講演会やセミナー、交流会を行い、多くを学んでいます。
「集成館は、工場と別邸が同じ敷地内にある非常に珍しいつくりで、これは他の国には見受けられない」「集成館は、水力を使って自然エネルギーを活用し、美しい景観を保ちながら、近代工業化が成功した稀有な例」と先生から伺い、そうした研究を今後深めていけたらと考えています。
また、たとえば集成館の反射炉で造られた鉄は、どの程度の強度があったのかといったことは、現時点では詳しい研究がなされていません。「薩摩のものづくり研究会」は現在休止している状態ですが、今後はこうしたテーマを掲げ、近代化を成し遂げた志士たちの実績を後世に伝える研究活動を再開したいと思います。
Vol.57
日本の未来のために今を生きる~明治日本の産業革命遺産の使命は「先人のスピリットを活かしていけば日本は救われる」という気づきと勇気を与えること
Vol.56
明治日本の産業遺産は日本の誇り~先人たちの歩みを知ることは日本の教育を見つめ直すことに通じる
フジサンケイグループ 代表
株式会社フジ・メディア・ホールディングス取締役相談役
株式会社フジテレビジョン 取締役相談役
Vol.55
世界遺産登録までの道のりは、山あり谷ありだった~人の縁という運に恵まれ、救われ、道を拓いて~
日本港湾空港建設協会連合会 顧問(元、一般財団法人 港湾空港総合技術センター理事長)
Vol.54
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Vol.53
日本で初めて反射炉を作った佐賀藩、洋式海軍の拠点だった「三重津海軍所」~世界遺産登録に注いだ情熱を次世代に繋ぎたい。
前、佐野常民記念館(現、佐野常民と三重津海軍所跡の歴史館)館長
Vol.52
八幡製鉄所は、今も世界最先端のものづくりを作り続ける現役製鉄所
一般財団法人産業遺産国民会議 理事
特定非営利活動法人 里山を考える会 理事
Vol.51
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Vol.50
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Vol. 49
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Vol.48
金属学の視点から紐解いて明らかになった産業史の真実~日本人の聡明さ、勤勉さ、不屈の精神を次世代へ伝えることが明治日本の産業革命遺産の使命~
Vol.47
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Vol.46
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Vol.45
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「遺産観光」の振興に向けたルート整備にいっそうの力を~忘れ難い故郷・呉への空襲と広島原爆の記憶~
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世界とつながる町~"長崎のたから"を"世界のたから"へ~
Vol.21
「ICOMOS-TICCIH共同原則」の真価問われる"世界の実験場"~日本政府が推進する新たな保全へのチャレンジ~
Vol.20
忘れ難いS・スミス氏との激論の日々 ~異文化の中で出会った"なじみ深い19世紀の産業遺産"~
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歴史や文化を継承することは、次世代の技術革新を生み出す~"使いながら残す"に道を開いた「明治日本の産業革命遺産」~
Vol.18
シリアル登録方式の保全管理に新たな道を拓いた「明治日本の産業革命遺産」-- 今後の大きな課題は「記憶と理解を引き継ぐ人材研修」
ヘリテージ保全並びに世界遺産の専門家としてグローバルに活躍する国際コンサルタント
ダンカン・マーシャル(Duncan Marshall)氏
Vol.17
ジャイアント・カンチレバークレーンと小菅修船場跡の3Dデジタル・ドキュメンテーション
The Glasgow School of Art’s School of Simulation and Visualization、データ・アクイジション責任者
Vol.15
「スコティッシュ・テン プロジェクト」によるデジタル文書化
ヒストリック・スコットランド
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Vol.14
富士山と韮山反射炉、2つの世界遺産を一望できる茶畑の丘 --次の夢は「子どものためのミニ反射炉」で体験学習
Vol.13
登録までの道のりと資産の今後を見つめて
ロイヤル・カレッジ・オブ・アート副学長・評議会議長
イングランド・ウェールズにおけるカナル&リバートラスト遺産顧問
Vol.12
正確な情報発信の中で、歴史を見つめるきっかけに
Vol.11
「ものづくりの街・北九州」への愛着と誇り--"シビック・プライド"を呼び起こしてくれた世界文化遺産登録
Vol.10
世界遺産登録決定祝賀会レポート(@ドイツ・ボン)
2015年6月28日から7月8日まで、ドイツ・ボンにて第 39 回世界遺産委員会が開催され、「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録が決定しました。
今回は、世界遺産登録決定祝賀会の様子をお伝えいたします。
Vol.9
使いながら保存する-「稼働遺産」の保存・活用に新たな道を拓く
阪神高速道路株式会社 取締役兼常務執行役員
(一般財団法人産業遺産国民会議 理事)
Vol.8
港湾法の体系で、世界遺産の保全を担保する
Vol.7
近代化を切り拓いた長州ファイブと試行錯誤の痕跡を残す萩の資産
Vol.6
日本の「ものづくり」「産業」の原点を伝える「明治日本の産業革命遺産」
Vol.5
日本の近代工業化を石炭産業によって支えた三池エリア
Vol.4
国家、社会のため、広い視野と使命感を持って試行錯誤しつつ挑戦し続けた「明治の産業革命」の意義
文部科学省 生涯学習政策局 生涯学習総括官
前 内閣官房 内閣参事官
Vol.3
「鉄は釜石から八幡へ」 近代製鉄発祥の地から誇り高き文化を伝える
Vol.2
強く豊かな国家を目指して 薩摩藩主島津斉彬が築いた『集成館』
一般財団法人産業遺産国民会議 理事
島津興業 相談役
Vol.1
産業国家日本の原点 『明治日本の産業革命遺産』を次世代へ
「九州・山口の近代化産業遺産群」世界遺産登録推進協議会 会長/鹿児島県知事